最近観た韓国映画3本をレビュー。

 

カナダでのファンタジア国際映画祭最優秀作品賞受賞作。高速鉄道を舞台にした韓国版バイオハザード。ゾンビ映画ながらホラーではなくパニックサバイバルで恐怖・絶望感という感じはしない。やたらゾンビの運動神経が良くて不気味で怖いという感じはせず、どちらかというと父娘愛などの人間ドラマが見どころ。全体を通してテンポが良くキャラ設定や出演陣の演技も良い。悪役はとことん悪役なので清々しい。ただ原題「プサン行き」なのに、日本版タイトル「新感染」(新幹線[しんかんせん])とはちょっとふざけ過ぎだと思う。観やすい韓国映画・ゾンビ映画として結構オススメ。

 

藤原竜也主演の「22年目の告白」という日本映画があるが、そちらは実は韓国映画のリメイク版で、こちら「殺人の告白」が原作。ある連続殺人事件の犯人が、時効をむかえてから突如名乗り出てくるが、イケメンだったのでメディアで注目される。実はそれには巧妙に仕組まれた理由がある・・・、というのがラフなストーリー。話のオチはかなり面白い。ただ観やすい映画をつくりたかったのか、誘拐やカーチェイスのシーンを入れ込んでいるが、凄いチープ。ラストシーンも大衆受けを狙ったようなオチ。もっと韓国映画らしく、内面をえぐってくるような深い心理描写、生臭い暴力描写があればなお良かった。綺麗な作品に出来上がっているので観やすいのでおすすめしやすいが、ドロドロした韓国映画好きからするともう一歩。

 

ナ・ホンジン監督作品「チェイサー」。ソウルで実際に起きた連続殺人事件を題材にしたクライムサスペンスである。こちら大鐘賞(監督賞)を受賞している。観終わって「観たかった韓国映画はこれこれ!」と思った。救いがない結末、生々しい暴力シーン、増幅する怒り。これぞ韓国映画。儒教は救いという概念がなく、また異民族に弾圧されてきた故に韓国は「恨の文化」が成立した。韓国のクライムサスペンスにはそれが如実に表れている。

 

主人公はデリヘルを経営しているが、そこで働く女性たちが次々に失踪。そこで主人公は独自に捜査をはじめるが・・・。テンポも良いし、とりわけ出演陣の演技はかなり良い。緊迫感や絶望感が素晴らしい。ただ犯人のところに行くのになぜか主人公は武器を持たない等、結構イライラする場面も多かった。ただ本作は韓国のクライムサスペンスの定番として語り継がれるだろう。韓流にうかれている世の女性人も韓国のクライムサスペンスは観たほうが勉強になると思う。これこそ韓国映画の真髄だ。

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国立新美術館で開催されている「至上の印象派展」へ行ってきた。スイスの実業家のビュールレが収集したコレクションの展覧会である。コレクションは防犯上の理由等によりチューリヒ美術館に寄贈されることになったので、コレクションの全体像を把握できる最後の美術展である。印象派展であるが、モダンアートなども展示されている。

 

貴族が没落し、芸術の擁護者として次に台頭したのが国家であった。国家はその性質的に保守的である。ゆえに伝統的な絵画を擁護し、印象派は当初受け入れなかった。しかし、資本主義経済が浸透し、銀行家・実業家などの市場参加者が多様化し、また新興国アメリカによるマーケットの拡大などにより印象派は次第に受け入れられていった。

 

印象派は、野外作成、光りの描写への傾倒、モチーフの日常性を特徴とする。これらの特徴がなぜ生じたのだろう。まずチューブ入りの絵の具の発明により、画家が作業場から解放された影響が大きい。野外での作成が可能となり、画家は自然をありのまま眺めながらの製作が可能になり、それゆえに光の繊細な変化を描写することが可能となったのだ。教会・貴族が没落したことで、従来の伝統的なモチーフにこだわる必要性がなくなり、また中産階級の台頭もあり、日常的なモチーフの選択が可能となった。また近代化の影響により個人の活動領域が拡大したことで、画家の独自性を育む社会環境が整備されたことも重要なファクターであろう。

 

今回の展示会で様々な画家の作品を観たが、やはりモネやマネは美しい。マネの「ベルヴェの庭の隅」、「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」は色彩が素晴らしく、その除情感は詩的である。また。下記画像(撮影可能エリア)のモネの大作「睡蓮の池」は日本初公開であるが、本当に美しい。この迫力は生じゃないと分からない。

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ゴッホの作品も素晴らしいが、個人的に好きなのは死期に近い頃の作品である。原色に近い色使い、荒らしい筆致がなんとも印象的である。浮世絵の影響による大胆な構成も興味深い。あとは、やはりゴーギャンの作品には興味惹かれた。その絵の持つ独特の生命力・躍動感がなんともいえない。あと、本展示会の目玉にもなっているルノワール作「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」はなんとも愛らしい。だが、ビュールレはナチスに武器を売って財を成した人物であるが、肖像画のモデルのイレーヌの夫や娘はユダヤ系ということでホロコーストで命を落としている。ナチスにより財を成した人物が、ホロコーストで家族を亡くした人物の肖像画をコレクションに入れるとは何とも皮肉だ。愛らしい絵画の裏にはなんとも悲痛な歴史が隠れている。本絵画展の広告において、このような歴史を隠蔽して、「最強の美少女」などと銘打つのは軽薄だと思う。

 

個人的にはスイスは好きではない。中立であることを口実にナチスの銀行としての役割を担い、またスイス銀行はホロコーストの遺族への返金を、死亡証明書がないことを口実に拒んだ。それ故にスイスは金融立国になり得たのだ。合法的な実業家ではあったが、ビュールレのこうした側面は忘れてはいけない。

 

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国立新美術館は、黒川紀章の設計した最後の美術館。このガラス張りの曲面する外壁がなんとも印象的な建築である。何度来てもこの空間は素晴らしい。

 

 

ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、明日発表のアカデミー作品賞でも最有力候補と言われている「シェイプ・オブ・ウォーター」を観てきた。同じく有力候補の「スリービルボード」は視聴済み。このどちらかになるか、はたまは予期せぬ伏兵が受賞するのか、結果が待ち遠しい。この2作品のうちであれば個人的には「シェイプ・オブ・ウォーター」が受賞するのではないかなと思っている。かなり拮抗していて正直どっちが選ばれるか分からないが、「スリービルボード」は、作品賞としてあまりにベタ過ぎる気がするのだ。

 

ちなみに、ギレルモ監督は「大アマゾンの半魚人」のリメイクを考えていたが実現できず、その作品にインスピレーションを得て、本作をつくったという。半魚人の外見はそっくりだ。1960年代のアメリカと、ギレルモ監督の独特のテイストを混ぜて世界観を構築しているが、やはり「パンズ・ラビリンス」に似ている。ファンタジー作品とはいえ、もともとはR18で、1か所をモザイク処理してR15になっている。大人向けのダークファンタジーで、結構残酷なシーンがあったりする。しかし、その血みどろの末、映画のラストは観たことがないほどファンタジックで美しいラストに仕上がっている。これがギレルモ節というところだろう。

 

美女と異形の男との恋は「美女と野獣」「オペラ座の怪人」などがある。しかし、監督は、「美女と野獣」が嫌いだそう。実際、同作の監督を降板している。というのも、人間は外見じゃないって話なのに、ラストで結局イケメンに戻るところがお気に召さないそう。たしかに言われて観ればそうだ。本作は半魚人はずっと半魚人のままだし、ヒロインも美女というわけではない。しかし、この映画のラストはあまりにも美しく溜息が出る。この異種間の恋を通し、外見の美醜を超越した神秘的な美しさを監督は描くことに成功している。

 

アカデミー作品賞ノミネート作品では他に「レディバード」が気になる。映画批評の集積サイトのRotten Tomatoesで、批評家支持99%・観衆スコア81%だ。「君の名前で僕を呼んで」も批評家支持96%・観衆スコア86%と評価が高く、興味がある。「ウィストン・チャーチル」「ペンタゴン・ペーパーズ」は観なくてもだいたい展開が読めてしまうので、積極的には観ないかなぁ。「ダンケルク」は興行的にはノミネート作品の中ではナンバーワンだけど、アメリカがあまり関係ないのでおそらく作品賞は取れないだろう。

 

 

「グレイテスト・ショーマン」は、実在のショービジネスマンのP・T・バーナムを主人公にしたミュージカル映画である。バーナムとは心理学でいう「バーナム効果」のバーナムである。バーナム効果とは、誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分だけに当てはまる性格だと捉えてしまうことをいう(占いで「当たってる!」という人がいるが、バーナム効果の代表例)。

 

アメリカではこちら評論家から酷評されて初週の興行成績は芳しくなく赤字必至の情勢だったが、観客の受けがよく、口コミが広がり大ヒットとなった。ハリウッド映画らしく、不要な要素はばっさりと切り捨て、直線的で分かりやすい演出・ストーリーになっているのが、評論家の評価が高くない理由だろう。ディズニー映画よろしく、P・T・バーナムのダークな側面は消去して、クリーンな映画に仕上がっている。だからこそ、評論家は嫌い、観客は喝采するのだ。

 

個人的には楽曲がどれも素晴らしいし、振付も印象的で、ストーリーも分かりやすいし、人にも勧めやすい。かなり好きな作品。「ラ・ラ・ランド」の方が映画として完成度は高いけど、どっちが好きかといえば「グレイテスト・ショーマン」を選びたい。

 

映画ラストでバーナムの言葉が流れるが、とても印象的な言葉である。「もっとも崇高な芸術とは人を幸せにすることだ」。映画中でもバーナムを批評家が批判するが、観客の人気は高かった。結局、本作を観て観客がHAPPYなら、それでいいじゃないかと思う。

 

ゴールデングローブ主題歌賞をとった「This is me」も素晴らしいが、個人的には「Never Enough」が大好きだった。また、ザックエフロンとヒュージャックマンの歌う「The Other Side」は、テンポも振付も良い。サントラを買おうかなと検討中。それにしても、2018.3/5にいよいよ第90回アカデミー賞の発表があるので楽しみである。

 

 

追伸

本作を観たとき、映画館の座席がトリプルブッキングになっていて驚いた。初めての体験だった。システムエラーで同じ席のチケットが発券できてしまったとのこと。ほぼ満席だったので最前列に座らされそうになったが、後方の予備席に案内されて、逆に当初の席より良い席だったので快適に鑑賞できた。映画館にも予備席があると初めて知った。

トイレ掃除をすると謙虚になり、心が清らかになるといった精神論は、古くからある。根性論とも見られるそれは、古い体質の企業が取り入れていると思われてきた。こうした中、清涼飲料水「ホッピー」を販売するホッピービバレッジの採用ページが波紋を広げている。同社は「人財教育」の一貫に「環境整備」を掲げ、「幸せな人生の実現のためには、心磨きが必要ですが、心を直接磨くことはできません。環境は、心の鏡です。心の鏡である、環境を磨くことで心を磨くことができます」と、掃除の大切さを訴えるのだが、ここに、膝をついて雑巾がけする社員と素手でトイレ掃除をしているように見える社員の画像が載っている。良く見ると手元が黒く、ゴム手袋などを装着しているようだが、ネットでは「不衛生だ」と拒否感を持つ人が多い。-- livedoor NEWS

 

ホッピ―というとビールテイスト飲料の1種である。ビールが高価だった時代に代替品として飲まれて、いまでもレトロな感じがウケて居酒屋でもよくおいてある。そんなホッピ―の製造元の採用ページになんとトイレを素手で触る男性の写真が掲載されており、ネット上で炎上している。

 

日本だとなぜかトイレを素手で掃除すると心が綺麗になるという意味不明な持論を持っている人がいて驚かされる。イエローハットの創業者がそれで、東洋経済で記事にもなっている(記事)。埼玉の学校でこれを実践しているところがあり、美談として埼玉新聞が取り上げ、批判されたこともあった(記事)。

 

当方はこの感覚が全く分からない。トイレには雑菌が付着しており、これを素手で触ることがどれだけ危険かなぜ理解できないのだろう。爪の間に入りこんだ雑菌がドアノブ等に付着すれば、たちまちパンデミックになるリスクがある。特にノロウイルスの時期は心配だ。特にホッピ―は食品会社である。これはホッピ―の製造に携わっている人もトイレを素手で触っているのだろうか。触っているとして、その後、どのように消毒をしているのだろうか。ホッピ―はたまに飲んでいたのだが、衛生面が心配で飲む気がしなくなった・・・。食品会社であるのに不衛生なイメージの写真を堂々と掲載する神経が狂ってると思う。

 

衛生観念が低い時代や、まともに教育を受けていない発展途上国ならまだしも、先進国の日本でこんな不衛生な慣行があることに驚かされる。中国のホテルで、トイレのブラシでコップを洗っていてニュースになっていたが、日本の衛生観念も五十歩百歩だと思う(記事)。もうちょっと科学的に考えてほしい。