このところ財務省の前では、減税や積極財政を求めるデモが続いています。(中略)参加者たちは「財務省解体」と書かれたプラカードを掲げたり、「増税反対」とか「消費税廃止」といった声を上げたりしていました。参加した人からは「SNSでデモのことを知り若い世代も考えないといけないと思って参加した」といった声や、「デモに来るのは3回目で、毎回人が増えている。所得が低い人たちは大変だ」などという声があがっていました。ー NHK
財務省解体デモがメディアでも取り上げられるようになったようで、NHKでも報道されている。ただこのデモは高邁な理想や確固たる信条によるものではない。国民の生活がどんどん苦しくなっているが、それを招来している元凶は財務省であるという、財務省悪玉論である。ちなみに、このデモを促進しているのは自称評論家の池戸万作である。彼については記事で書いたことがある。
池戸氏の名前は産経新聞でも確認できる。
この日のデモは、「元祖!財務省前デモ」という名称で2023年9月から、活動を行っている政治経済評論家の池戸万作氏(41)が主催。千葉県知事選に立候補した候補者が財務省前で選挙活動を始めたり、雨が強まったりするというトラブルもあったが、約30人が参加した。 池戸氏は冒頭、「『日本はこのままだと財政破綻する。だから国債発行をしてはいけない』ということがしきりに財務省を中心にいわれているが、こうしたことが真っ赤な噓だということで活動を行っている」と話した。その後、参加者が次々とマイクを握った。ー産経新聞
ただ財務省を解体したところで、歳入・歳出を担う官公庁は必要であり、新しい財務省が誕生するだけであり、財務省解体は何の意味もない。予算は国会で議決される以上、財務省前ではなく国会前でデモをするべきだ。
財務省解体デモ側の主張を簡易にまとめると次の通りだ。
① 通貨発行権がある国は、無限に通貨を発行できるから、税金は不要だ。財源は無限にあり財政破綻はありえない。
② 政府支出を増やせば、経済成長する。実際、政府支出が多い国ほど、経済成長している。
③ よって、減税し、通貨発行を増やしてベーシックインカムなどを実施すべきだ。
④ 上記であるのに財政破綻を理由に緊縮財政・増税を行っている財務省は日本の経済停滞の元凶だ。
しかし、上記は間違っている。
①の通り、大量に通貨を発行した場合、通貨はハイパーインフレして価値を失う。ハイパーインフレになった国は珍しくなく、ドイツやアルゼンチンでは経済が破綻した過去がある。②の政府支出を増やせば、経済成長するという論も賛否両論であり、経済成長したから財政豊かで政府支出を増やせたという「逆の因果」に過ぎない。日本は公共事業をさんざんやってきたが、結果、放漫財政を招き、現在の国債頼みの赤字財政になってしまった。①と②があり得ないから、③もあり得ないが、ベーシックインカムを求めているのは、収入がない池戸万作のただの願望だろう。もちろん、経済学者でも、ベーシックインカム賛成派はいるが、いくらでもお金は刷れるから、どんどん配ればいいなんていう主張をする人はいない。
ただ「財務省解体デモ」が一定の社会的影響を持っている以上、無視できない事象だ。「財務省解体デモ」の理論的な背景が薄弱としても、それに乗らざるを得ない人の心境はくむ必要がある。とにかく日本は税金・社会保険料が重く、手取りが少ない。会社負担分も考えると、平均的な会社員でも4割ぐらい国に取られている。さらにこれから子育て支援金名目の実質増税などが控えており、どんどん負担が増していく。現役世帯の負担は限界である。
こうした社会的なストレスが一定値を超えると、おかしな行動をとる大衆が出てくるのは世の常だ。江戸末期には「ええじゃないか」が起きた。評論家・作家の池田信夫は、「日比谷焼き討ち事件」(LINK)との類似を指摘している。ただ現代日本で大きな政治動乱が起こるかといえばNOだろうが、小規模な過激行動は増えるだろう。すでに安倍元首相は暗殺され、岸田元首相にも爆発物が投げつけられたが、最近でも、N国党立花孝志氏がナタで襲われている。ただ日本人の性質か、大きく行動を起こさないので、「茹でガエル」になる未来しか見えない。