アクションスリラーの社会派映画であるが、絶妙にブラックユーモアが織り込まれ、笑える人にはかなり笑える。米国では保守層は、左翼の暴力革命を正当化していると批判しているが、正直、過激派の左翼活動家も風刺しており、本作がテーマとしているのは、政党や主義など関係なく、極端な政治主義の滑稽さではなかろうかと思われた。なお、本作は小説「ヴァインランド」(トマス・ピンチョン作)にインスパイアされているそうだ(原作は未了)。
トランプ大統領当選前に撮影を開始しているようであるが、結果的には移民問題・人種差別・社会の分断など、トランプ政権によって特に浮き彫りになった現代アメリカの社会問題を風刺することになっており、社会風刺として面白い。映画のラストをどうとらえるかは人によるが、結局のところ、テーマは変われど、対立は続くということなのだろうと思った。
それにしても俳優陣の演技の見事さはさることながら、音楽の使い方が絶妙だと思う。物語の展開もどうなるかが読めず、160分ながら全く飽きることがない作品だった。社会風刺やブラックユーモアが笑える人なら楽しめる作品ではないかと思った。
【ネタバレ有り】
高尚な理想を追っていても、結局は小さく家庭に入ったディカプリオ演じる主人公のボブ。仲間との合言葉すらすっかり忘れてしまって、逆ギレしている必死さに会場から笑いがこぼれていた。おまけに逃走中になまった体が禍して哀れにもビルから転落してしまうマヌケっぷり。合言葉を忘れる迂闊さは笑えてしまうが、かくいう我々もあらゆるサービスのPWを全部覚えているかといえばNOだろう。自動入力ではなくアナログで入力を強いられれば、本作のディカプリオ状態になるだろうと思うと、主人公を笑っていられない。高尚な目的を持った革命家もただの人間なのだ。高尚な思想と現実とのギャップがなんとも哀愁が漂い笑える。
一方で、革命家を追う白人主義者のハードボイルドの軍人ロックジョー。ただその硬派さとは裏腹にドMで、黒人女性に恋に落ちてしまう。自身の思想には自信があり、白人主義グループへの所属を名誉に思っているが、最終的には本来的な性癖等がバレて拒絶され、始末されてしまう。思想の純粋性と生来的な性質との自己矛盾による破滅が滑稽で笑える。
結局、保守もリベラルもそれぞれ思想の崇高さと現実にはギャップがあり、それに真面目に取り組むほど、第三者的には滑稽にみえて、笑えてしまうのだ。ただそれをコメディタッチではなく、本作はどこまでもシリアスに描くので、ますます皮肉になっている。
シリアスな社会派映画になり過ぎず、アクションも交えつつ、ブラックユーモアもまぶしてと、絶妙にいい塩梅の映画だなと思った。さすが名匠ポール・トーマス・アンダーソン監督だ。
★4.2 / 5.0






















