(やたらとこの記事のアクセスが多いのですが、記事の内容が古いので一部を削除・修正しました(2021/9/12)。緑の文は2021/9/12に追記したものです。

(依然としてなぜかこの記事が私のブログのアクセス数で第1位の記事(笑)。情報を再加筆しました。青の文は2022年1月20日追加分です。

 

CHC理論とは、キャテル・ホーン・キャロルの三人の学者の頭文字をとったものである。キャテルは知能を流動性と動作性に分類し、両者から一般知能が構成されると考えた。ホーンは知能は多数の因子から成り、それらは同格であり一般知能因子には懐疑的な立場であった。

 

キャロルは、知能は階層的であると考え、三層説をとった。補足だが、知能が階層的とはどういうことだろう。「英語力」でイメージしてみよう。あの人が英語力があるという場合、英語力は読み・書き・話す・聞くの4技能を意味するだろう。では、その技能のうち、読む能力は、さらに語彙の多さ、抽象的思考力、論理性などの因子から成っている。というように、各能力は下位の因子から階層的に成り、最終的に「英語力」という能力が構成されると考えられる。キャロルは知能をそのように解釈したのである。

 

この3つの理論を統合したのが、CHC理論である。一般知能が一層目にあり、これが人の知能の総体的なものである(尚、一般知能の存在に関しては統計的な検証が行われているが、議論が続いている)。そして、一般知能は10の因子から成り、さらにそれらは数十個の因子から構成されると考えられている。二層目を成す10の因子とは次である。
・Gf:流動性知能;頭の回転の速さに関わる
・Gc:結晶性知能;一般知識・単語理解などの能力
・Gs:認知的処理速度
・Gv:視空間能力
・Gsm:短期記憶
・Glr:長期貯蔵と探索
・Ga:聴覚的処理
・Gt:決断と反応速度
・Gq:量的知識
・Grw:読み書き能力

ただ、GqとGrwは教育暦に左右されるため、知能因子とみない学者もいる。一方で、運動感覚能力、嗅覚因子などを加えた16因子説をとる人もいる。

 

では、従来のIQテストではどのような知能因子が測定できていたのだろうか。例えば、スタンフォード・ビネー5だと、流動性・結晶性・視空間能力・短期記憶・量的知識の5因子である。二層目を16因子とする学者からすると、知能の31%程度しか測定できていないが、10因子では半分、8因子とすると62%程度の知能を測定できていたことになる。WISC Ⅳも、結晶性・流動性・短期記憶・視空間能力・認知的処理速度の5因子が測定可能である。しょせんはIQテストも部分的な知性しか測定できていないのである。とはいえ、CHC理論によるIQテストの研究も実施されているので、今後のIQテストの精度の向上に期待である。

 

なお、IQテストの精度が向上した結果、IQが何と相関するのかも重要である点は付言したい。つまり、IQと、就職率・年収が相関すれば、IQは経済的成功に結び付く確率が高い(あくまで確率の高低の話で、失敗の可能性もある)。逆にIQが高いと、恋愛が苦手という場合もあり得る。この場合、IQの高さは、幸せな家庭を築くにはマイナス要因ともなりえる。こうした統計学的な調査は海外ではメジャーで、LSEのサトシ・カナザワが、「知能のパラドックス」で明らかにしている。つまり、IQの高さが社会生活上、何の役に立ち、逆に何の役に立たないのかを、その逆にIQの低さが社会生活上、何の役に立ち、逆に何の役に立たないのかを調査することは、極端にIQが高い又は低い人の行動指針や自己理解の一助となりえる。単にIQの高いから漠然と優秀だとかいう妄想は何の意味もない。IQなんて人類がサバンナで暮らしていた当時は何の役にも立たなかった脳機能である。

 

 

ちなみに、ネットなどでよくある行列推理だけのIQテストだと、この視空間能力ぐらいしか測定できていないが、詩空間能力も、数個の検査から割り出されるので、行列推理だけ検査しても信憑性に乏しい。もちろん、行列推理の能力は、全検査IQ(一般的に言うIQ)との相関性は高いものの、相関係数は0.7程度であり、マクロ的な調査では相関性は高いが、個人のIQ測定としてはだいぶラフであるちなみに、IQはあまり変わらないと言われるが、IQは脳構造の変化によって上下するというのが、医学的な研究でも明らかになっている:「Nature」(LINK)。

 

ちなみにいうと、IQ高過ぎて社会馴染めないという人がたまにいるが、社会性や性格的な問題も大きい。なお、元MENSA会員のブログ主である私はIQ169(標準偏差24)だが、浪人・留年は一切なしで修士号を取得し、外資系コンサル勤務である。行列推理のIQは個人のIQを測定するには極めてラフである。特にIQテストの長年の使いまわしはフリン効果(年々テストスコアが上昇しIQ平均が上昇する傾向)の関係で無意味である。あまりIQ万能説に踊らされない方がいいと思うし、IQを知りたければちゃんとした医療機関でWAISなどの試験を受けるしかない。特にネットの行列推理のIQはあまり意味はないので、あしからず。

 

追加情報だが、WAISなどの正式なIQテストは、病院等で検査可能な場合がある。発達障害等の検査の一環で受けさせられる場合が多いが、単にIQを知りたいという場合でも受けられる場合もあるので問い合わせてみると良い(興味本位での受験はダメというところもあります)。私は単に特性を知りたいということで、IQテストだけ実施してもらい、このスコアでMENSAに会員登録しました(JAPAM MENSAに正式に入会ただ会費を途中で支払わなかったので会員資格は失効し、元MENSA会員となります)。

 

ただ私はMENSA会員だったけど、正直、MENSAの試験は半分合格らしいので信憑性は乏しいと思う(ただの行列推理しか実施していないのでラフである)。なお、MENSAの実施するIQテストは詳細が非公開である。つまり、第三者の検証に耐えうる信頼性があるかは全く不明である。IQは統計学的に算出される数値なので、非公開とするのは意味不明である。単に統計学的根拠を出せばよいだけで、それを出せないのはそれだけ信用に足らない試験といわれても仕方がない。データが何も公開されていないので、MENSA実施の行列推理テストと、WAISなどの適切に標準化されたIQテストとの相関性も何もよく分からないのが実際である。付言すると、行列推理はパターンが限られており、練習でスコアは向上することが知られている(LINK)。

 

日本はIQ(というか進学全般)研究で後進国だが、IQに関する本もちょろちょろ出ていますので参考にするとよいだろう;IQ(知能指数)に関する本。日本はガラパゴスなのでぜひ海外の文献にもあたってもらいたいものだ。

 

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