〈ネイチャー オブ フォゲティング〉キム・ジチョル インタビュー | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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引き続き〈ネイチャー オブ フォゲティング〉を反芻中。

 

キャスト別ハイライト。これで思い出したけど、最後ハンガーから服がどんどん外されて空になっていくのが、記憶が失われていく象徴のような気がして、切ないような怖いような気がした。

 

 

 

 

ではキム・ジチョル氏のインタビュー記事。

 

元記事

 

「人生のかけら」

俳優のキム·ジチョルが記憶する

瞬間の美しさ



(一部省略) 昨年、大好評を博したフィジカルシアター〈ネイチャー·オブ·フォゲティング〉が12月、初の長期公演の幕を開ける。再び美しい人生の旅程を描く俳優キム·ジチョルは、初演に続き今シーズンでも早期認知症で記憶が絡み合い、その記憶さえ失っていく男「トム」を演じる。

 

初演当時、観客から多くの反響を得た〈ネイチャー·オブ·フォゲティング〉が再び戻ってきて嬉しいです。再び作品に参加する気分はどうか。 

とても良い作品がまたできてうれしい。初演メンバーが一緒なのもいいし、新しいメンバーと新しい組み合わせが期待できて浮かれたりもする。もっと楽しく公演できそうだ。

 

フィジカルシアター(身体劇)というジャンルの特性上、身振りだけで表現して演技するのは容易ではなさそうだ。難しい点は?

私がアンサンブル出身なので、振り付けや体力的な部分についてはあまり悩まなかった。映像を見たら専攻者レベルの舞踊の実力は不必要そうだった。十分にできると思った。しかし、決まった台詞がないので、動きで言葉を表現するのが難しいと言えば難しい点かもしれない。

 

フィジカルシアターならではの魅力は?

「ノンバーバル」の特性を持っているので、言語の障壁なく見られるという点が大きな魅力だろう。どんな文化圏でも十分共感できるという長所がある。〈ウェディング〉という作品でもノンバーバルショーをしたが、その時も非言語の力を感じた。

 

昨シーズンと今シーズン、準備しながら一番変わった点は何か。 

前回はオリジナルに対する尊敬心から、決まっている通りにやり遂げようという気持ちが大きかった。そのため、トムに対する個人的な解釈を練習の時にあまり織り込めなかった。公演が始まって回を重ねながら少しずつ私の解釈を加えた。今回は息を合わせる部分では難しいだろうが、トムとして一人で舞台を埋めるタイミングには、私がやってみたかった解釈をもう少し積極的に表現してみたい。

 

ギヨム演出との作業はどうか。

キヨム演出家は各俳優が持っている個性と魅力を尊重してくれる。そして、それが劇にうまく加わることをいつも望んでいるので、「答えがないから、あなたの思い通りに試してみなさい」とよく言う。俳優たちが持ってきた解釈をうまく混ぜ合わせて整理する作業が好きなようだ」(笑)

 

今シーズンの一番大きな宿題は何か。

初めてこの劇に出会った時、タイトルに関する疑問が多かった。「Nature Of Forgetting」が正確にどういう意味なのかと。早期認知症を扱っているから「Forgetting」という単語を使ったと思うが、どんなニュアンスなのかピンとこなかった。

 

ところが、初演をして数ヶ月後に考えてみたら、このタイトルが与える意味が少し違って見えてきた。単に早期認知症という素材に限ったのではなく、人生が持つ様々な属性を思い起こさせるタイトルではないかと思った。

 

この劇を見ている観客の方々がタイトルの意味を噛みしめられるように表現するのが、今シーズンの個人的な宿題になりそうだ。

 

〈ネイチャー・オブ・フォゲティング〉再演のために生活パターンを変えたという話を見たが。

高い体力レベルを要求する作品なので、初演に入る前に水泳を始めた。もう私の人生で欠かせない部分だ。週に二、三回は必ず行こうと思う。そして〈ネイチャー·オブ·フォゲティング〉再演というニュースを聞いた途端、ずっと体力管理をしなきゃという気がして、水泳からジョギング、登山までいろんな運動をしてみたら、それがもう2年になった。〈ネイチャー·オブ·フォゲティング〉はランタイムは短いが、爆発的にエネルギーを消耗するから、体力の配分についてもこの作品で本格的に考えるようになった。体力を管理するパターンを見つけさせてくれたありがたい作品だ。

 

確かに地道に運動をするのが他の作品をする時もすごく助かるだろう。

もちろんだ。今〈パン〉という作品をやっているが、昔は〈パン〉の公演を2回すると運転もできない程だった。それくらい大変な公演で。でも今は公演2回を楽々とやっている。むしろエネルギーを出しながら公演をしている。

 

今年初め〈ウィリアムとウィリアムのウィリアムたち〉〈光炎ソナタ〉〈インタビュー〉の3作品を同時にした時もこつこつ運動したから体力的に持ちこたえられたと思う。

 

前回はワンキャストだったが、今度は新しい俳優が合流してダブルキャストだ。共演俳優たちとの呼吸はどうか。

練習を始めたばかりだが、どうしても合わせるのに試行錯誤する。タイミングを合わせる部分が多くてミスも出てくるし。でも、そのミスさえも作品に柔らかく溶け込むことができそうで、練習が面白い。チョン・ソンウは順番を覚えるためにまだ余裕がないが、順番を身につけたらワンキャストとは違う組み合わせの数で激しく、面白くできると思う。試行錯誤も面白さに昇華させるという演出の言葉が理解できる。

 

早期認知症で徐々に記憶を失っていくトムを演じるが、トムの人生を年代記のように見せる作品だから、彼の人生全般について考えたと思うが。トムはどんな人物で、どうやって作りあげたのか。

認知症も種類が多いが、トムは早期認知症だ。私が調べたところによると、心的外傷後ストレスで早期認知症を発症することもあるそうだ。だからトムが自分を虐待したり、ストレスを受けると暴力的に表現する面もある。ギヨム演出家もそれを念頭に置いて作ったようだ。そして「早期」認知症なので、50代のトムは認知症患者であっても力がある。今はエネルギーを持っているトムの姿について多く考えている。そして、イザベラをどれだけ愛していたのか、単に過去に対する記憶が強く残っているのか、それとも懐かしがっているのかによって、トムのキャラクターが決まると思って、その部分も考慮している。

 

トムが一番切なくて愛おしく感じられる瞬間はいつか。

トムが思い出そうとする時、あるジェスチャーをするが、そうして努力し続け頑張る姿が切ない。そして最後にイザベラが去る前にキスをしてくれるシーンがある。私がトムを演じながらもトムをハグしてあげたかった。抱きしめてあげたいし、いたわってあげたかった。

 

トムとして他の人物たちに言いたいことがあれば。

ソフィーには「自分のことは自分がうまくやれるように最大限努力してみるよ。もっといいお父さんになって苦労させないようにするよ」、イザベラには「愛してるよ。ありがとう。ごめんね」、マイクには「私がこんな状態なのに、ずっと会いにきてくれてありがとう」、エマには「学生時代に面白かった私たちを思い出させてくれてありがとう」と言ってあげたい。

 

全部ありがとうという言葉が入っている。俳優のキム・ジチョルがトムに言ってあげたい言葉は?

今朝、認知症の家族の世話をしている伯父に会ってきた。私が大変でしょう、と言ったら伯父が「それでも本人はストレスはないようだ」と言っていた。認知症は世話する人が大変で、本人は一人明るくて笑っているそうだ。その話を聞いたら、トムにもあまりストレスを受けずにいい思い出だけを持ちながら、死ぬまで楽に暮らしていってほしいと言ってあげたい。もう少し娘のソフィーに集中しろとも言いたい。

 

忘れられない公演が知りたい。

この作品でインタビューをしているからではなく、〈ネイチャー・オブ・フォゲティング〉が本当に印象深い。初演の時、私と親しいユ・ジュヘ俳優が来た。公演を見て私と挨拶をするのに、ジュヘがずっと泣いていた。話せないくらい泣いていたから、なぜ泣くのか聞いたら、友達がすごく誇らしいと。(笑)普段ジュヘに会うとお互いからかうのに忙しいのに、そんなに泣く姿を見ると、この作品がどれだけすごいか改めて感じた。その後一緒に〈ウェイステッド〉もしたが、プライドが傷つくのか、その話は二度と持ち出さなかった。(笑)とにかくその経験が感動的で、強烈に記憶に残っているようだ。

 

デビューして12年だが、今まで様々な作品をやってきた中で、特別な作品や人物はいるか。

今思い浮かぶのは〈ファンレター〉のイ・ユンだ。ずっと主人公をやってきて、イ・ユンというキャラクターに出会ったが、演技を違うやり方でやってみる機会となった。初めて訛った演技もしてみたし。イ・ユンというキャラクターのおかげで、私の演技のスペクトルが広くなった気がする。とても愛されたし。

 

最後に、この作品を通じて観客に伝えたいメッセージがあれば。

この作品が観客の方々の経験した様々な過去の記憶をもう一度回想できる機会になるといいし、そのように回想した記憶で現在をどう生きていくかを振り返ればもっといいと思う。ただ未来だけを見ながら走っていくのではなく、現在をうまく生きるために過ぎ去った痕跡を思い出すこと。そういう経験ができる公演が〈ネイチャー・オブ・フォゲティング〉だと思う。