『忘れられた季節』
死が自分の存在自体が消えることであれば、認知症は肉体だけが残る。体は残るが、周辺人物と過去の記憶はもちろん、自分自身までを忘れることになるから。いくら忘却が神からのプレゼントと言っても、自分自身まで失う瞬間にこれをプレゼントと捉えるのは容易ではない。一日一日消える記憶の前で、私たちは何を捕まえることができるだろうか。演劇〈ネイチャー オブ フォゲティング〉は記憶を失っていく一人の男を通じて人生の旅を一緒に辿っていく。
英国プロダクション、シアター・リー(Theatre Re)が誕生させたフィジカルシアター〈ネイチャー オブ フォゲティング〉は、セリフや歌なしに俳優たちの動きと音楽で舞台を飾った。4人の俳優はダイナミックかつ繊細な表現で物語を伝え、ピアノ、バイオリン、パーカッション、ループステーションを演奏する2人組ライブバンドがその上に美しい音楽を載せる。2017年ロンドン国際マイムフェスティバルで「人生の祝福に満ちた動き」という賛辞を受けて出発した後、同年エジンバラフリンジフェスティバルで最高の話題作に浮上した。国内では2019年にウラン文化財団で招待公演を行い、続いて2022年に韓国俳優らと一緒にライセンス初演を上げた。
今回のプロダクションは、演出家ギヨム・フィジーを除いた全員が韓国人で構成される。言語の代わりに動きでメッセージを伝える「フィジカルシアター」の大衆的可能性を模索し、より多くの観客に近づく予定だ。散らばる記憶の断片の間で混乱を経験するトム役は、前回の公演に出演したキム・ジチョルが戻り、チョン・ソンウが新たに合流する。彼の娘ソフィーと妻イザベラ役はキム・ジュヨンとチョン・ヘジュが演じる。ここにマ・ヒョンジン、クァク・ダイン、カン・ウンナ、ソン・ナヨンが一緒にエネルギーを加える。
12月28日
色々な意味で、とても面白かった。
とにかく、表現形式!(時々シルクドソレイユ)
効果音とも呼べる音楽。
記憶が再生されたり途切れたりする認知症の人の頭の中。
想像するしかないトムの人生。
冒頭、娘が話しかけていても反応のない空虚な表情のトム。切れかかった回路が繋がるかのように一瞬視線が焦点を結ぶ…けれどもまた空虚さに覆われる。
言葉は無いけれど、表情や動作というものは雄弁なものだと知る。
ジチョルさんは動作が舞踏ぽくコントロールされた感じで好きだった。(決して優雅という意味ではない。)
汗だくなのは知っていたけど、カテコで目の前に立ってたジチョルさんは、プールから上がってきたんですか?ってくらい汗びっしょりだった。
12月30日
女性陣は前回と同じキャスト。
トムの愉快な友人、マイクはクァク・ダイン君。チリチリパーマのヘアースタイルで、一瞬見違えてしまった。こじらせていないキャラで見るのは初めてだ。
そして、55歳にしては若々しく見えるチョン・ソンウ君。
例によって滝汗の激しい身体表現。実年齢55歳の俳優さんがやるにはハードルが高い?と思ってしまった。
この作品、俳優をイジメるために作った??俳優さんたち、なぜ出演を決めたの?!(くらい凄い)
とにかく見応えあり。作家、作曲家、振付、全てが絡み合って、いったいどうしたらこんな物が作れるのか不思議だ。