〈テレーズ・ラカン〉観覧 | 韓国ミュージカルを 訳しまくるブログ

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韓国ミュージカル
全ては自分の予習復習のため
(注意: 目標はネタバレ100%)
近頃はメモ付き写真アルバムとしても使用中。


挑発的な素材と独特の古風な雰囲気を持つ

魅惑的なミュージカル

 

4人それぞれに異なる強烈な欲望の中

残酷な愛が再び繰り広げられる

 

 

(あらすじ) 

1860年代のフランス。

子供の頃、父から叔母に預けられた後、病弱な従兄弟、カミーユと一緒に幼年時代を過ごしたテレーズ。テレーズは叔母と一緒にカミーユの面倒を見ながら父を待つが、父は結局戻らないまま亡くなる。

 

自分の意志とは関係なく、カミーユと愛情のない結婚をするテレーズ。無意味な結婚生活を続けていたある日、カミーユの幼い頃の友達であるローランが彼らを訪ねてくる。

 

テレーズはカミーユとは違って完熟した男性美を持つローランにたちまち心を奪われる。2人はすぐに密かな関係に発展し、お互いに深く入り込み始める。

 

お互いを耽溺する密会だけで満足できなかった二人は、彼らの障害であるカミーユ殺害を計画する。

 

疑われる余地のない完全犯罪に成功するが、すでに彼らには誰も予想していなかった破滅の影が垂れ込めていたのだった。

 

 
〈テレーズ・ラカン〉が2023年公演流通協力支援作に選定され、10月と11月に4ヶ所で地方公演が行われた。(何か補助が出ているんだろうと想像するのみ。)
 

ソウル滞在期間を少し延長して、大邱と洪城で2公演づつ観てきた。これは大邱のキャスボ。

大邱ではあちこちにプログラムブックが積み上げてあり、ご自由にお持ちください状態。25ページの立派なプログラムだ。

 

こちらは洪城のキャスボ。ツアー前半の固定メンバーなのでいつも同じ顔ぶれ。ボードも同じものかな?

 

写真では見にくいかもしれないが、大邱も洪城も塞がれたオケピが広く張り出しているので、1列目だとしても舞台から10mほど離れてしまう。遠い!

 

韓国の助っ人が大邱は4列、洪城は2列の席をつかんでくれたので、幸い表情までよく見えた。ちょんまるこまぷた。自分で取った6列と7列も許容範囲。

 

殺伐としたストーリーなのに、なぜ好きなのか自分でも不思議だが、独特の世界観にマッチする独特の音楽が魅力的で、ジョンウォン君の声の魅力が引き立つナンバーが多いのも良い。

 

私には中毒性のあるナンバー。「ワルツ」

 

テレーズも醜さと美しさを兼ね備えていて、結局、美しさを感じられるから好きなのかもしれない。

 

昨年の本公演よりもローランがゲスな男になっていた。以前のパク・ローランは3ローランの中でテレーズを一番愛していると評判だった。(他のローランは見てないので、自分では比較できないが)確かに思いやりさえ見えるローランだった。今回は自己中。多分その方が原作よりなんだと思う。

 

カミーユがオンマに恨みをぶつけるのを完全に他人事として眺めてるし、この状況をどう利用できるか考えている風でもある。オンマを慰めて取り入ろうとしながらも、陰ではうんざりな表情。

 

カミーユに田舎に戻ろうと言われ、錯乱状態のテレーズに、うるさい!黙れ!というトーンで「落ち着け!」と言う。(以前はいたわりトーン。)

 

本公演では、怯え苦しんでいるテレーズの頬を両手で包み、カミーユの幻影を見させないよう「俺を見ろ」と(口パクで)言っていたローランだが、今回は怯えるテレーズが厄介者にしか見えない雰囲気。

 

映像を見直してみると、今年の方が怯え方がひどくなっている気がする。なので最後の決断が納得できる。

 

カミーユの幻影は加害者の罪悪感の産物と思っていたが、今回は意思を持った存在のように見えた。

 

テレーズとローランを結婚させたオンマが、カミーユに「けんちゃんけっち?」と尋ねると、彼女はじっと見つめるカミーユの視線に応えるかのように崩れ落ちる。

 

この質問のニュアンスが「あなたは構わないでしょ?」と聞こえて、オンマの発作はテレーズの結婚を気に入らないカミーユの返事のようだった。復讐とも言えるか?

 

オンマは全身麻痺を患い、できる事と言ったら目玉を動かすのと手に持ったベルを鳴らすことだけ。「静かに!」と子供たちの発言を封じてきた本人が発言できなくなるアイロニー。それも復讐の一部かもしれない。

 

ところで、ここの登場人物たちが「オンマ」と呼ぶのに違和感を感じていたら、ネイティブにも少し異常に響くらしい。ましてや他人のローランが口にする「オンマ」というニュアンスが、この物語の多くを語っているんじゃないだろうか。面白い!




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