あらすじが初演版と比べてどう変わったか比較するのが大変なので、再演版だけに集中して書いてみました。
やっと語れる。
一つ気づいたのが、初演とはキャスト表の順番が変更されていること。
初演:アーサー、ギネビア、ランスロット、モルガン、メレアガン
再演:アーサー、モルガン、メレアガン、ランスロット、ギネビア
三角関係の3人が前に来ている初演に対して、再演ではアーサー、モルガン、メレアガンの順。この3人が与えられた運命の中でどういう選択をしていくのかに焦点が当てられているのかもしれない。ランスロットとギネビアのエピソードはアーサーを悩ませるための素材のひとつ?
「欲しても得られない者と、欲していないのに得てしまった者。この2人がどんな選択をすることになるのか。」
こんなモーリンの台詞もあるので、そこがポイントなのかとも思った。
目を引くのは周辺人物や、細かいシーンがカットされていること。
竜、鹿、狼をはじめ、アーサーの父や兄の存在も無し。アーサーが剣を抜くまでのくだりもシンプルで超特急。ギネビア父がアーサーを引き留めるところとか、細かい会話も大々的にカット。
初演ではフランス版を引きずっていて、R&D風にアレンジしたとは言え、若干どっちつかずのテイストがあったとすれば、今回削れる部分は極力削ぎ落として、表現したい部分に全力を注いだ感じ。
つまり、ミュージックバンクを極める方向に行ったんではないかと。
初演の「ミュージックバンク」は揶揄する言葉でもあったと思う。しかし再演では「どうだ!ミュージックバンクだ!文句あるか?」という気持ちよさがある。
「とんでもございません!参りました!」と答えるしかない。
独特の振付やレーザー照明が目立つが、ただ派手に歌い踊るのではなくて、話の展開や人物の感情を最大限に表現する上でナンバーの力が大きい。
舞台セットはメタリックに統一されてスタイリッシュ。照明効果の生きるセットだと思う。映像は使用されない。
初演時は正直 ”Wake Up” とか、少々滑稽さを感じなくもなかったのだが、再演ではそうした要素が消えた。テイストは同じなのだがより洗練されたのではないかと思う。もしくは指導が良いのか?アンサンブルの技量もあるとは思うが、振付センスの良さを感じる。
衣装もスマートさや華麗さがアップ。ギネビアのドレスもお姫様っぽいキラキラが増えていた。
ストーリー的には、平凡な人だったアーサーが悩みながらどんどん高貴な王になっていく過程が際立った。初演よりもアーサーの苦しみと気高さが強調されているように思う。
展開が早いので、あっという間に立派な王になってしまう気がしなくもない。でも(見えない所で)サクソン族と戦ってるわけだし、色々経験してるんだろうと想像して補ったりする。
「サクソン族は追い払った」の一言で終わるのが軽いっちゃ軽い。
メレアガンは俳優によって雰囲気が変わるので、次回「俳優の感想編」で考えてみようと思う。
大きな変更の「変身マント」と「指輪」はあらすじに下線を引いてみた。
モルガンも「口先だけの人」と言っていたが、今回モーリンは大きな行動は起こさない。そんなキャラなのでウーサー王は勝手に変身マントを持ち出した事になっている。
ギネビアとランスロットは、より自制心のある貞淑な人っぽい。初めから魔法の影響を受けているので、本来だったら恋に落ちていなかった可能性もある。
聖杯を探しに行く前、挨拶に来たランスロットがギネビアに短剣を返しながら「敵に向かう時は迷ってはいけない、チャンスは一瞬だから」とアドバイスする。剣を受け取ったギネビアは、少し考えたあと剣を突きつけながら「それではチャンスは今だけですね」と答える。
どういう意味なのか良く分からなかったが、今これを書いていて、ギネビアにとってランスロットは心惹かれる相手であり、だからこそ敵でもあるのかな?と思った。でも違うかも。
剣先を下ろして背を向け旅の安全を祈るギネビア。囁くように告白してしまうランスロット。ついに2人の想いが大きく共鳴しあう「愛ではないかのように」のシーン。
…よ、よだれが。(あっ、すみません)
このナンバーの音源が無いのが残念だが、(ハイライトに一部収録されていたので追加しておいた。)この切ないシーンに相応しい、美しくも悲しいデュエットが最高に好き。ただし、「愛しているふり」で寄りかかられるアーサーは気の毒だといつも思う。
ランスロットはもう必要ないと言って魔法の指輪を置いていく。お互いの想いを確認しあって成就したから、これからは騎士の任務に立ち戻るという意味かと最初思った…が。魔法に頼らなくても2人の愛は永遠に続くほど強いという確信を得たのかも。
結局のところ、ランスロットはギネビアが拉致されたと聞き飛び出して行ってしまうし、ギネビアはランスロットが深手を負えば付きっきりで看病、息耐えると人目も憚らずに嘆き悲しむ…。やはり運命だったのだろうか。魔法とは関係なく。ランスロットがみな素敵なので、切なさ倍増である。
そう言えば日本でも上演されるのだった。日本版はどんなテイストなのか楽しみだ。