司会者:2016年のモーツアルトを見ました。
最初に思い出すのは、赤いジャケットとジーンズ。それにレゲエの髪型と言うのかな?
監督:シモク君が着ているような美しいコートなのにジーンズとレゲエのヘアスタイルなのは、モーツアルトの自由さや音楽が当時にしたらそれほど斬新だったのを表現しています。
大衆的なオペラもたくさん作曲しています。庶民でも理解しやすい作品です。代表作は魔笛ですね。
もう一つこの作品の特徴は、モーツアルトの天才性をアマデという少年時代の姿で表現していることです。モーツァルトと常に一緒にいます。モーツァルトが表現できない内面の感情を表現してくれます。
アマデは一言もしゃべりません。シモク君は歌がとても上手なのに歌も一切ありません。でも誰が見てもモーツアルトの感情がわかるような存在です。
司会:モーツアルトという役は俳優さんにとって大変だろうと思います。ほとんど舞台に出ずっぱりだし、歌は難しいし。
今シーズン初めて参加するパク・ガンヒョンさん。実際に練習してみてどんな感じですか?
ガン:普通練習する時は、これぐらいやったからもう帰っていいよ、となるのに、今回は終わりが見えなくて。例えば先週は毎日10時までやって、今週には終わるだろうと予想したのに、まだまだシーンがずっと続くんですよ。今でもまだやってるんですけど、昨日も10時までやりました。この役を演じた先輩たちを本当に尊敬します。
監督:前回一緒にやった笑う男の終わり頃(モーツアルトに)キャスティングされたんですよね。私に3,4回聞いてきました。
「何がもっと大変なんですか?モーツアルトがこれより大変なの?」なので「やってみなさいよ。やればわかるでしょ」と。近頃はやってみてどうですか?
ガン:演じた先輩たちのほとんどが、演じた作品の中で1番大変なのがモーツアルトだと言っていたそうです。僕は笑う男でも注ぎ出す部分が大変だったから…。
監督:主人公だもの。〈笑う男〉の笑う男だし、〈モーツアルト〉のモーツァルトだし。それは大変よって言った記憶があります。
司会:シモクさんは前作にガンヒョンさんと共演ですが息は合いますか?モーツアルトではどんな感じですか?
シモク:今回もよく合います。点数をつけたら100点です。
ガン:わぁ、サンキュー。シモクはすごく上手いです。余りにも上手なので、僕たちがあいつは子供じゃない、30代だって言ってるんです。
司会:成熟したシモクさんとガンヒョンさんの呼吸を舞台で見るのが楽しみです。
お話が楽しすぎて歌をまだ聞いていませんね。
ガン:最初にお聞かせする「僕こそ音楽」は、モーツァルトが常に抱えている想いがあるんですが、ありのままの自分を愛して欲しいという気持ち。父親に対する気持ちも大きくて。そんな気持ちを込めた歌です。
♪♪♪ 僕こそ音楽
監督:ガンヒョンさんのモーツアルトはこれまでとはひと味違って、純粋な、美少年のモーツアルトを表現してくれると期待しています。
ガン:(照れながらも)そうします、監督。
監督:(世間から)愛を受けたモーツアルトの他に、そうではなかった2人のモーツァルトもいます。父親と姉のレオポルトとナンネルです。
レオポルトは厳格に見えますが、誰よりもヴォルフガングとナンネルを愛する父性愛溢れる人物です。モーツァルトを正しい方向に導こうと努力しますが、表現方法が下手なので距離が広がる一方です。自分の音楽の夢をヴォルフガングを通じて叶えようとする人です。
ナンネルも実際は秀でた音楽性を持つ芸術家だったと言います。不幸にも当時は女性が芸術家として活動することが出来ませんでしたから、常に父親と弟の影で彼らの幸せを願う、ある意味気の毒な女性です。
司会:監督のお話を伺うと期待がますます高まりますね。ホン・ギョンスさんとチョン・スミさんは初参加ですが、感想と練習の様子を伺えますか?
ホン:私はこの作品を韓国で上演する以前に原曲で見たことがあります。どの曲も完璧で美しい一方、すごく難しいと思いました。10周年でようやく参加できたのが嬉しくて、一生懸命練習しています。
スミ:私…、さっきのガンヒョンの歌がまだ残っていて…。(涙)
ガン:なんで泣いてるの⁈
スミ:実を言うと練習する時も泣いてるんです。何回見ても、ほんとにすごくいいわ。
ガン:シモクの力じゃないの?
スミ:自分が演じている作品なのに、いつも見学しているような気になって、音楽も本当に良いし、ガンヒョンとシモクが凄く素敵。(涙)
司会:ナンネルの話をしてもらえますか?(笑)
スミ:前に観劇した時、普通は最後に立ち上がって拍手するのに、1幕が終わった途端に立ち上がってわーっと拍手したんですよ。
司会:それくらいモーツアルトと言う作品に魅力を感じたと言うお話ですね?
スミ:きれいにまとめてくださって。自分の曲だからじゃなくて「王子は旅立つ」を初めて聞いた時鳥肌が立つほどだったので、その曲を自分が歌うことになって光栄です。
監督:私は、スミさんがオーディションを受けた日のことを覚えてます。スミさんがこの歌を歌って、審査員たちもみんな泣いたんですよ。その集中力が素晴らしくて。実際の舞台の上で衣装もつけてその歌を聴くのが楽しみです。
♪♪♪ 心を固く持て
♪♪♪ 王子は旅立つ
監督:レオポルトと言う役は下手をすると冷酷な父親に見えてしまうかもしれません。実際は息子を愛しているのに、その方法が違ってしまった。本当は父性愛にあふれるキャラクターにホン・ギョンスさんの暖かい声がぴったりだと思います。
時には自分の考えを押し付ける厳格なトーンも出るので、一緒に作業しながら期待が高まります。
スミさんはご覧の通りの純粋な姿の中に集中力が見えたでしょう?スミさんのナンネルにも新しい面があります。
これまでが従順で内省的なナンネルだったとすれば、スミさんには独特のトーンや表現方法があります。芸術家気質もあり、芸術家としての苦悩を分け合う面もあるし、弟を通じて表現したい欲も感じるために、もう少し積極的で能動的なナンネルを見せてくれるんじゃないでしょうか。
スミ:がんばりま〜す。
監督:モーツァルトは私が手がける作品の中でも1番規模の大きい28人のオーケストラ編成です。お二人の歌を聴きながら、指揮者として観客の皆さんに早くライブでお聞きかせしたくなりました。
司会:多くの名ナンバーの中でも黄金の星がやはり何と言っても…。少し前、主要キャスト全員で歌う黄金の星が話題になりましたね。子役の純粋な声と一緒に歌うその映像を見て、また別の魅力があるなと思いました。
ヨンスク:この曲は千回、一万回歌ってもそのたびに胸が高鳴る曲ですが、全員がこの状況を心配しながら心を合わせて歌ったので、より一層感動的でした。
監督:この曲にエネルギーがあって、存在感のある理由が…。モーツアルトの後援者ですよね。ヴァルトシュテッテン男爵夫人は貴族でモーツアルトの天才性をまず見抜いて。成功の機会を与えるために。
ヨンスクさんの普段の姿も同じですね。しょっちゅう差し入れもしてくれて。
ガン:最高の先輩です!
ヨンスク:さあ、どうでしょうか?(笑)
黄金の星は少し難しい挑戦に対するエネルギーを持っているようです。ヴァルトシュテッテン男爵夫人は実在の人物で、モーツアルトに書いた手紙があるそうです。でもこの作品では、神のメッセンジャーのようにモーツアルトを導く、そんなキャラクターとして出てきます。
監督:なので原作者たちが、彼女の存在は人間なのか、天使なのか、曖昧なキャラクターとして作曲したそうですね。ですから私たちの作品でも、衣装も1番豪華で、いつも高いところで歌いますね。
ガン:人間ではないと思いますね。
監督:芸術家には常に頼もしい後援者がいたおかげで私たちが文化遺産を楽しめるのではないかと思います。
♪♪♪ 黄金の星
ヨンスク:私も毎回歌いながら胸にこみ上げるものがあります。私自身も力をもらっている気がするし。