マキシムの不在中にレベッカのいとこ、ジャック・ファベルがやって来る。破産状態のため、金目のものを求めてレベッカの部屋を物色しに来たのだ。実はジャックはレベッカの愛人だった。ダンバース夫人は早く帰るように急かすが、何も知らない「私」が2人に出くわしてしまう。
ジャックが帰ると「私」に仮装舞踏会の衣装を提案するダンバース夫人。「私」は彼女と親しくなれたかと嬉しくなる。
ダンバース夫人: 行かないと、ファベル。知られてはなりません。
ジャック・ファベル: 心配することは無いさ、デニー。マキシムはロンドンだろ。まあ、新しい女主人様が我々を見かけるかもしれないが。
ここは安全です。レベッカの神聖な部屋。
レベッカがどこかに金を置いてないかな。俺はまるっきりの金欠なんだ。
そこにある物に触らないで!
彼女は俺のものだった。愛していたのは俺だけだ。
♪♪♪
男たちが崇拝した彼女
その魔法のような魅力で
全ての人を屈服させた
いつも取り替えるだけ
男たちも彼女を夢見た
でも誰も自分のものにできなかった
あなたも同じよ
違う 俺は別だ
俺は彼女のいとこ
彼女の恋人
血で禁じられた愛
止められなかった俺たちの欲望と情熱
秘められた俺達の愛
男たちが崇拝した彼女
その魔法のような魅力で
(飽きたのは俺の方だ)
全ての人を屈服させた
(あんたも知ってるじゃないか)
いつも取り替えるだけ
(そこをどけ、デニー!)
男たちも彼女を夢見た
(俺は金が必要なんだ)
でも誰も自分のものにできなかった
(彼女だってそれを望んでるさ)
あなたも同じよ
(デニー…)
♪♪♪
シッ!
あ〜、そこにいらっしゃるとも知らず。私が驚かせてしまったのなら謝ります。おい、デニー。ここも特に安全とは言えないな。ドウィンター夫人を俺たち2人が驚かせてしまったじゃないか。
声が聞こえたもので、ダンバース夫人。
紹介してくれないのか?
ジャック…
なんだよ。
ジャック・ファベルさんです、奥様。ドウィンター夫人のいとこです。
ああ、初めまして。お茶でもいかがですか?
いやー、これは全くご親切な方だ。こういう場合はどうしたらいいのかな。こんなご招待はとてもじゃないがお断りできないさ。…冗談だよ。冗談。
こんなに優しくて美しい淑女に、私のような男が近づく訳にはいきません。では、またお目にかかります。夫人。
気をつけてお帰り下さい、ジャック・ファベルさん。
あ!一つお願いしてもよろしいですか。今日私がここに来たことを夫人の胸にだけしまって頂けませんか。マキシムが私のことを嫌っているもので。それに優しくて可愛そうなデニーが私のせいで困ることになってはいけませんしね。
あ、ええ、もちろん。分かりました。
あのー。
仮装舞踏会でどんな衣装にするか、決定されましたか?
いいえ、まだです。だけど(あの人)…。
ご主人様はどんなものが良いとはおっしゃいませんでしたか?
ええ、全部私に任せると。
そうですか。でしたら私が一つ提案をさせて頂きます。
えっ?
初めてお屋敷においでになった日、階段でじっと見つめていらした絵は、ご主人様が一番お好きな絵です。
そうなんですか?
キャロリン・ドウィンター。ご主人様のおじい様の妹でいらっしゃいます。
ああ!あのドレス!マキシムが好きそうだわ!
びっくりさせて差し上げないと。最高の裁断師をお呼び致します。絵を見て全く同じように作れるように。
ありがとう、ダンバース夫人!本当にご親切だわ!それからこれは、2人だけの秘密にしましょうね。