小部屋でがんばるオーディオライフ その4
13. セッティング
エージングが済んだら(未エージングでも問題はありませんが)本格的なセッティングに入ります。
音を相手にするわけですから、最も優先的に考えるのは周波数特性です。
当然、好みの問題なのでとにかく自分が気に入る特性を探すしかありません。とはいえ、まっさらな状態から気に入る特性を探し当てるのは至難の業なので先人の知恵を借りましょう。
以前ちらっと話に出した気がしますが、テンプレとしてよく参考にされるのが"三つ山特性"と"ピラミッド特性"です。
"三つ山特性"は古くから指標とされてきた伝統的な特性で、100Hz/1kHz/10kHzにそれぞれ+6dB程度のピークを作るものです。一般的にはクラシック向きと言われる特性で、愛好者も多いです。ただ、個人的にはソースを選ぶ傾向が強いように感じるのでクラシック以外がメインの場合は注意が必要です。
"ピラミッド特性"は近年広まりつつある特性です。1kHzを境に低域は上げて高域は下げるというものです。低域は50Hzに+6dB程度のピークを作り、高域は20kHzで-6dB程度まで下げるのが基本形でしょうか。こちらも一般的にはクラシック向きと言われる特性ですが、全体的になめらかなのでクセは少ないです。
foobarのイコライザ画面なので見づらいですが、20Hzはどちらも0dBとなります。ピークを定めてなめらかに変化させるのがポイントです。以上のどちらかが基準となるのではないでしょうか。両方を組み合わせるのも手で、ピラミッド型でありながら三つ山に変化させた特性も人気があるようです。
と、良い音のする特性を紹介してみましたが、筆者はと言えばフラットで聴いています。ピラミッド型はなかなか優秀で、小音量時には等ラウドネス曲線ともうまく噛み合って良い感じに聴かせてくれるのですが、筆者の場合は音楽を聴くだけのシステムではないので汎用性を重視してフラットにしています。音楽専用の場合はフラットよりピラミッド型がしっくりくるという方が多いと思います。
等ラウドネス曲線の話が出たところでついでに触れますが、個人的には小音量の場合は低音をブーストして同じエネルギーバランスにもちこむよりも、かまぼこ型を楽しむ方がスマートだと思います。そもそも小音量でないといけない理由はお隣に騒音を与えないためですが、ご存じのように高音よりも低音を遮断する方がはるかに大変です。小音量だからと低音をブーストしていくのはどうにも本末転倒な気がしてなりません。
そうは言っても低音が弱いと寂しく感じることもあるでしょうから最終的には好みの問題です。
周波数特性の次は響きのコントロールです。
有名な話では、コンサートホールで耳に届く音のうち直接音と反射音の比が1:8だと言われています。真偽の程はわかりませんが、通常部屋で音楽を聴く場合でも半分以上は反射音です。この反射音が"響き"であり原音以上にリスナーの心理を左右する大事な要素です。心地よく音楽を聴けるかどうかは"響き"にかかっていると言っても過言ではありません。
さて、反射音が大事だと言っても、そう簡単にコントロールできるものではありません。部屋の壁面をはじめとして室内に設置されているすべての物体の影響を受けるからです。この点に関してはコンポーネントを少なくできる専用リスニングルームが圧倒的に有利です。生活空間にスピーカーを置いている限り、逆立ちしてもリスニングルームより良い音で聴くことはできません。
では、生活空間でできる対策は何か。共振を抑えることです。共振する家具があるとそれ自身がノイズ源となるので可能な限り対策します。やることは簡単で、空っぽの箱を作らないこと。本棚がスカスカだったら本以外でもなにかしら物を置いて空間を埋めてやります。手っ取り早いのはタオルを放り込むことでしょうか。また、指向性の強い高音はスピーカーの向きで調整ができます。リスニングポジションより外側に向ければ直接音が減り反射音が増えます。
なお、調整によって周波数特性を変えては本末転倒なので、調整後には測定しなおします。
かなり長くなりましたが、これで終了となります。
セッティングはぱっとできるものではなく、試聴を重ねて徐々に追い込んでいくものなので実際には文字で見るよりも遥かに大変かと思いますが、その過程も楽しいものです。
次回ですが、電気的特性と音の話とか、アンプと出力の話とか、試聴盤の話とか、ネタはいろいろあるのでどれかしらに触れたいと思います。
小部屋でがんばるオーディオライフ その3
10. アンプを選ぼう
入り口の最後はもちろんアンプです。DAC/プリ/パワーとを厳密に区別することにはもはや意味がないのでシステムに合わせて柔軟に組み合わせてください。アナログ段に入ったところでスペックを意識するかと思います。
アンプですから、真っ先に考えるのは出力がどれくらい必要かということです。
小音量再生に限った話ではありませんが、欲しい音量に対して適切なアンプを選ぶことは基本です。小音量再生の場合はそれがよりシビアとなります。
考え方としては、耳にどれぐらい音が届いてほしいかを最初に決めます。筆者の場合はリスニングポイントでピーク90dBというのがひとつの基準です。この90dBという数字、一部の方にはお馴染みではないでしょうか。そう、一般的なピアノの音量です。筆者の部屋でピアノを弾こうものなら間違いなくお隣から苦情が来るわけですが、とりあえず最大でそれぐらい音量が確保できれば実用上の問題はないと考えられます。
音量が決まったら逆算しましょう。計算式はこちら"L2=L1-20log(d2/d1)"。筆者の場合、4305Hの能率は89dB、リスニングポジションとスピーカーの距離は0.7mなので、L1:89dB、d1:1m、d2:0.7mを入れて計算すると入力1Wで92.1dBとなります。当然ですがスピーカーは2本あるのでステレオの場合は95.1dBとなり、リスニングポジションで90dBの音量を得るためには0.26W+0.26W必要ということになります。
いかがでしょう、びっくりするぐらい小さな出力で足りるということがわかってもらえたかと思います。もちろん、リスニング距離0.7mというのは極端に短い方だと思いますが、小さな部屋で90dBをターゲットとする分には出力は殆ど問題にならないことに変わりはありません。小音量再生の最大の利点です。スペック上はどのアンプでも構わないわけですから、真空管でも半導体でもD級でも好きなものが使えます。
どれでも使えるとわかったところで、お気に入りのアンプを選んでください。いろいろな選び方がありますが、最終的には自分の判断に従うのが正解かと思います。デバイスの特性に沿った選び方をすれば大きく外れることはないでしょう。メーカー品で小出力アンプは珍しいので自作してみるのも楽しいと思います。
11. 設置して配線しよう
すべての機器が決まったところで設置します。残念ながら小部屋だと置きたい場所より置ける場所となりがちですが気にすることはありません。なにをしたところでルームアコースティックに吸収されるので適当に置いてください。設置条件によっては適度に制振を施します。
適当といっても、スピーカーだけは全くでたらめというわけにはいきません。当然リスニングポジションとスピーカーとで二等辺三角形を成す場所に置きます。理想の形は正三角形ですが、そこまでこだわる必要はないでしょう。ユニットはリスニングポジションに向けます。
場所が決まったら次に配線です。普通のケーブルで普通に繋げてください。個人的には自作をオススメします。配線の基本は可能な限り短く、なので市販のケーブルだと長さが合わないことがよくあります。また、機器の組み合わせによってはコネクタの変換が必要になりますが、こちらもアダプタをかませるよりも直接ハンダ付けで対応した方がスマートです。
なお、スピーカーの接続にはスピーカーケーブル、アンプ間の接続にはシールドケーブルを使ってください。ケーブルの処理の違いにはそれぞれ理由があるので素直に用途に沿って使いましょう。光ケーブルは破損注意。
12. 音を出してみる
接続が完了したら、正しく音が出るか確認します。問題なければDEQ2496で簡単に特性をそろえておきます。オート任せで構わないのでフラットに合わせておきましょう。バスレフ型スピーカーの場合は共振周波数以下がほとんど出ない構造なので無理に持ち上げさせないようにしてください。
大体フラットに合わせたところで聴きなれた曲で試聴してみます。その音が最も基本的なルームアコースティックとなります。基本ですから、この時点である程度聴ける状態でないと調整しても厳しいです。また、新品の機器があるならこの段階でエージングさせます。通常は200時間で十分でしょうか。
つづく
小部屋でがんばるオーディオライフ その2
前回は音の出口を用意しましたので、今回は音の入り口に関してです。
6. 音源を決めよう
入り口ですから上流から考えます。手持ちの音源に合わせたプレイヤーを使うことになりますが、S/PDIF出力を備えていることが条件となります。光か同軸かは問いません、というのは下流にDEQ2496を入れるからでそちらは両端子に対応しています。
トランスポーターとして使うのでアナログ段は使いません。単体プレイヤーでもPCでもPS3でもお好きなものでどうぞ。使い勝手を考えればPCが圧倒的に便利なのは言うまでもありませんが、シーンに応じて使い分ける楽しみを追求するのもひとつの手です。ただ、何を使うにしてもワード長とサンプリングレートを24bit/96kHzに変換できる機器だと後々便利です。
アナログソースの場合はA/Dコンバータを用意しないといけませんが、ひとまずDEQ2496にまかせてみて不満を感じるかどうか試すのが先です。
7. デジタル信号を変換しよう
オーディオソースとして最も一般的な規格は16bit/44.1kHzで、言うまでもなくCDの規格です。DEQ2496に入れる前にこれを24bit/96kHzに変換してやります。ちょっとだけ用語の説明をしておくと、bit数はワード長を表し、周波数Hzはサンプリングレートを表します。そして、変換するのにはもちろん理由があります。
ワード長の変換は必ず行ってください。bit数は諧調の多さを示しているのですが、下流で音量調整をするので16bitのままだとどうしても諧調落ちが発生しています。わかりやすくいえば音量をなめらかに変化させられなくなくなるということです。なお、当たり前のことですが24bitにしたからといって、元データより音が滑らかになるなんてことはあり得ません。そうではなく、音量調整をした後でも16bitの滑らかさを保つための24bitです。
サンプリングレートの変換は好みに応じてとなります。なぜかと言うと、サンプリング変換でわずかですが音が変わるからです。できることなら音を変える処理を挟みたくはないのですが、それでも変換させるのはデジタルソース起因のノイズを可聴域の外に追い出せるからです。ただ、この"変化"がくせもので人によっては変換しない方が音がいいと感じたり、その逆だったりします。それも曲によって印象が変わったりするので全く手に負えません。ということで、好みによりけりです。
ちなみに、筆者はどんなソースも一律96kHzにして出力しています。予測できない音質変化には目をつむり、確実に効果が見込めるノイズ除去を優先しました。なので、元ソースの音と96kHzの音の違いを意識する場面が一切なく、精神衛生上は非常によろしいです。より支配的な、コンスタントな効果を重視する方にはこのスタイルをお勧めします。なお、ごく稀に44.1kHzから96kHzに変換すると整数倍じゃないから誤差が生じて劣化すると勘違いしている方がいますが、一般的には公倍数を介して処理されるのでそのようなことはありません。
変換の方法ですが、トランスポーター自身が変換機能を持っていれば迷わずそちらを使います。PCの場合は当然ソフトウェア処理させます。個人的にはWindowsでfoobarを使うのが一番便利だと思っていますが、自分の環境に合わせて適宜選んでください。
トランスポーター単体で変換できない時はD/Dコンバーターを入れます。市場にいろいろな製品が出回っているので例のごとく好きなものでいいわけですが、D/Dコンバーターなんてよくわからないという方にはSRC2496をオススメしておきます。
8. イコライザーを導入しよう
オーディオファイルの間ではイコライザーは肯定派と否定派に結構分かれるようですが、専用のリスニングルームで再生できていない場合は迷わず導入してください。ましてや筆者のように劣悪な環境で聴いている人にとってイコライザーはセッティングを追い込むための要となります。
具体的なセッティングは後ほど詳しく述べますが、DEQ2496とECM8000とマイクスタンドはセットで使いましょう。測定用マイクなのでスタンドも必須です。DEQ2496ではなくDG-48がいいという方はそちらでも構いませんが、絶対的なスペックの差があるわけでもないので、差額で部屋の防音対策をした方がコストパフォーマンスは高いでしょう。
9. DACを選ぼう
デジタル段の終着点です。S/PDIF入力を持っていて、24bit/96kHzに対応しているものであればどれでも構いません。また、DEQ2496にもアナログ出力がついているのでDACとして使用することもできます。ここからアナログ段に入るのでそろそろ小音量を意識するでしょうか。
つづく

