KKR札幌医療センターの敷地内薬局を巡る入札妨害の裁判は、先月の一審札幌地裁判決で、病院の元事務部長と業者側の元幹部2人に対し執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。判決を不服とした業者側元幹部2人は、5/1付で札幌高裁に控訴した。

 

 元事務部長のほうは刑が確定したとはいえ、いまだにこの事件、どうもスッキリしない‥モヤモヤ感がずっと続いている。

 

 

 工事や機器の買い入れで不正入札といった場合、多くは予定価格の漏洩によるが、その場合落札金額は予定価格を下回るから、入札を実施する側に損失は生じない。むしろ安く契約できる。不正に落札した側も、利益は落札額の範囲で限定的になる。したがって、贈収賄の有無にかかわらず、社会の公正を害した関係者を処罰すれば、それでだいたい一件落着するだろうし、抑止という点でも、まぁ効果は期待できる。

 

 しかし今回の札幌医療センターとアイン薬局による事件は、入札妨害罪について実行者の処罰が決定しても、札幌医療センターとアイン薬局の双方は20年以上の長期にわたって、不正入札によった大きな利益を得続けるから、ケシカラン、一件落着とは言えないのではと思う。

 

 具体的な金額では、病院は情報を漏らしたことで敷地賃貸料を月額350万円増額させているから、不正入札による増額分だけでも350万円×12か月×20年=8億4千万円の上乗せ収入となる契約を締結したことになる。

 

 アイン薬局のほうの収入は正確には分からないが、札幌医療センター公表の外来患者988名(令和4年度1日平均外来患者)のうち約半数が処方箋を持ち込むと仮定して「令和4年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」(厚労省)の処方箋 1 枚当たり調剤医療費 9,392 円を用いた“かなり乱暴な計算”をすれば、9,392円×500枚×20日=93,920,000円(1か月あたり)の安定収入になる。土地借料を月額400万円から750万円に増額しても、敷地内薬局として十分稼げる計算だ。

 

 

 現行の制度上、今回の両者の契約が有効なままならば、極端なハナシ、有罪でも執行猶予がつくのを見込んだ入札妨害ができてしまうのではないか?医療センター元事務部長のような“みなし公務員”の場合、支払い済み退職金がどうなるのか分からないが、規定がなければ返納はないだろうし、“できる”規定なら組織への貢献度で相殺されてしまうかもしれない。退職後の就職先さえ用意してやれば、組織のために忠義を尽くす輩がいるかもしれない。(ドラマの見過ぎやんかw)

 

 札幌医療センターは4/18付にホームページで「信用失墜」を謝罪し、「再発防止に努め信頼回復に向け取り組んでまいります」としているが、それ以上の言及はない。不正入札によった今後の大きな利益については、もらい得のまま世間が忘れるのを待つのだろうか?

 

 再発防止に努めるというなら、増額分を公益のために寄付してはどうだろうか?例えば被災地支援に振り向けてもいい。不正入札しても組織の収入にならないとなれば、今回の事件のような組織への忠義も無意味になるから、抑止にもなるだろう。

 

 今回の事件では、KKR(国家公務員共済組合連合会)本部が全く知らん顔しているのもケシカラン。札幌医療センターのような直営病院を全国で運営し、医療事業として連結決算しているから、不正に増額した収入も含めて全体決算している。

 

 国家公務員の福利厚生のための組織が、不正入札による増収分までも是として収入し運営しているというのは、どうにもスッキリしない‥モヤモヤしてしまうのだ。

 

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