KKR入札妨害事件の初公判があった。報道によれば、病院側被告の元事務部長が特定の保険薬局に受注させようとした理由は明らかにならなかった。

 

 元事務部長は繰り返し理由を問われた公判でも「私利私欲は一切ない」と述べたというので、なおさら疑問が晴れない。ひたすら病院の利益追求のために行ったとすれば、忠義の尽くし方がハンパないということだろうか‥。

 

 

 業者側の被告は、悪いことだという気持ちが全くなかったわけではないが、是が非でも(契約を)取りたかった、というからこちらは正直だ。

 

 ただ、業者側弁護士は事業は入札ではなく随意契約であり、偽計入札妨害罪の対象ではないとして無罪を主張したとある。随意契約も入札だし立法趣旨からみてもムリ筋かと思うが、そう主張せざるをえないんだろう。

 

 ところでこの事件、誰が利益を得たのか?いまのところ贈収賄は確認されていない。他方、病院は情報を漏らしたことで敷地賃貸料を月額350万円増額させ、向こう20年以上にわたって総額25億円以上の収入となる契約を締結している。その間調剤薬局は、敷地内薬局として多額の安定収入が見込めることとなった。

 

 

 そうすると、今後裁判が結審して各被告個人がかりに有罪となって不正入札が認定されたとしても、入札がやり直されることはないのか?契約に基づき、すでに薬局は敷地内で稼働している。賃借料は病院側に支払われているだろうし、病院職員は設置された福利厚生施設利用という利益を享受している。

 

 この状況は看過されていいのだろうか?病院側も調剤薬局側も一部の職員社員の首を差し出しながらも、経済的利益は確保してはなさないというのでは、道義的に筋が通らないように思える。

 

 被害者はいないだろうか?公募に応じた5社のうち入札妨害により次点とされた調剤薬局は、敷地内薬局として多額の安定収入が見こまれる契約が締結できたはずのところ、不正行為により得られたはずの利益が損なわれたと主張できるのではなかろうか?

 

 まあ、次点者の逸失利益の話はともかく、現在のKKR病院と調剤薬局の契約が不正入札によってなされたものらしいから、両者のいまの見解、その契約の有効性の検証、履行継続の適否とか道義的責任など、法廷で問われていること以外の問題について、報道機関が深堀してくれないだろうか。個人の不法行為で終わらせる案件でないと思っているのだ。