ここ数ヶ月間、新刊書の執筆に取り組んでいたが
五月十六日、
最終原稿を、展転社の相澤行一君宛、出稿した。
壮快な風が、頬を払って吹き抜けたような、
すっきりとした充実感が心に湧き上がった。
新刊書の題は、未だ、決定していないが、
「誰か、邦家萬古の伝統を想はざる」
との思いで書き続けた。
次は、最終項「終わりに」の書き出しである。
・・・ ・・・ ・・・
本書執筆に没頭している日々、
不思議で神秘な思いに包まれていた。
それは一万年以上の昔に生きた縄文の人と、
現在に生きる自分との連続性の思いであり、
自分の血の中に、
「縄文人が生きている」という実感だ。
つまり、日本人こそ、
過去は、
「過ぎ去った日付のところにある」のではなく、
「現在の我々とともにある」
ことを実感できる民族であるという
「無限の安らぎ」が私を包んでいたのだ。
何万年もユーラシアの果てしない大地を、
陽が昇ってくる東に向かって、
大地が尽きて海に直面するまで移動を続けた人々が、
遂に海を渡って日本列島に上陸し、
何万年ものあいだ、
生物多様性に富むこの列島の地から
他に移住することがなかった。
この歴史が我々日本人を形成した。