キーワードは「右傾化」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【産経抄】これも右傾化? 3月14日


 中国や韓国の反日宣伝のキーワードのひとつが、日本の社会の「右傾化」である。そもそも、政治的な立場の違いを「右」と「左」で区別するようになったのは、フランス革命からだ。国民会議で、議長席から見て右方に穏健派が、左方に急進派が議席を占めたことに由来する。つまり、言葉自体に否定的なイメージはない。

 ▼中国や韓国は、「軍国主義」や「排外主義」の意味で使っているらしい。だとすれば、自分たちの国こそ、「右傾化」と呼ぶべきであろう。中国はすさまじい勢いで国防予算を増やし、海洋進出の野心を隠さない。韓国の反日運動は、日本人の想像を絶する過激さである。

 ▼最近、両国が「右傾化」の例として挙げているのが、「アンネの日記」など、ユダヤ人迫害関連の本が図書館や書店で大量に破られた事件だった。どこがどうつながるのか。幸い朝日新聞にコメントを寄せた大学准教授が、説明してくれている。

 ▼歴史や領土の問題で、中韓両国に反発する人から、戦勝国側の価値観をすべて否定しようとする意見が出ている。その延長線上にあるのが、「ユダヤ人虐殺がうそならば、南京事件や慰安婦問題だって全否定できる」というゆがんだ発想だというのだ。

 ▼牽強(けんきょう)付会の説としかいいようがない。一連の事件については、東京都豊島区の書店への不法侵入の容疑で逮捕された30代の無職男が、関与を認める供述をしている。卑劣で許しがたい事件の背景についても、徹底的に調べてほしい。准教授には、事件が「見立て」通りだったのか改めて聞きたいものだ。

 ▼ちなみに、「右」寄りの小欄は子供のころ、「アンネの日記」を読んで涙し、今も大虐殺を経験したユダヤの人たちに、深い同情を寄せている。