職人。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





ニッポンの防衛産業

どんな任務も遂行する海自艦艇支える職人たち。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130903/plt1309030722001-n1.htm




皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 


海上自衛隊の護衛艦「いずも」。圧倒される大きさだ



 海上自衛隊の護衛艦「いずも」の進水式には3000人もの参列者が訪れ、その中には関連企業も多く含まれていたが、関係者は感慨と同時に「これから」のことも頭の中にあったのではないだろうか。

 神奈川県横浜市にある三波工業は、海自艦艇の通信用アンテナのほとんどの艤装(ぎそう)や保守整備を行う会社だ。レーダーなど重要分野を担っているということもあり、技術者たちはいつどんな時に呼ばれるかもしれないという意識を持っているという。

 「整備が必要な所にはどこにでも行きます」

 通信機の整備のため、真冬の稚内に出かけたときは車で移動中に猛吹雪に遭遇、全く前に進まなくなった。下車してみると、なんと雪の壁に突っ込んでいた。さすがにこの日は天気の回復を待ったが、海自艦艇の場合は悪天候の時こそ、むしろ急ぎ駆けつけなければならない場合も多いのだ。

 「まるで映画のワンシーンのようだなと、いつも思います」

 あと数時間で出港する! そんな時に急に電子機器の調子が悪くなることがある。現場に急行しその原因を探るも、すぐに解決策が分かるわけではない。しかし、時計の針が刻々と進むのを横目に、極めて短時間で修理をこなすのが仕事だ。

 もし、それができなければ、艦艇の行動を大きく狂わせてしまうことになってしまう。だから彼らは何としてもやり遂げるのだ。なぜ、そんなことができるのか?

 「経験の積み重ねでしょう。普段の定期修理などでも技術力が養われるんです」

 自衛隊の運用に必要不可欠な緊急時に対応する能力は、平素から常に技術を磨かねば発揮できない。それゆえ整備に関わる企業は仕事が不定期になるなど、そうした機会が減ることを最も懸念している。

 そしてもう1つ、作業にあたる人々の意外な注意事項がある。

 「忘れ物をしないことです!」

 甲板のラッタル(=階段)を作業用の機器を抱えて上下するため、1つでも何か忘れれば行ったり来たりで時間もロスをし、何より体力の消耗が大きい。5階~8階建ての建物をはしごで昇り降りしているようなものなのだ。

 また、「ひゅうが」「いせ」などは全長が約200メートル、「いずも」はさらに長いわけで、2往復もすれば軽く1キロ歩いてしまうことになる。

 体力と技術、そして限られた時間内での作業。職人たちの知られざるミッション・インポッシブルが艦艇を陰で支えているといえるだろう。

 

■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 

 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。