【尖閣国有化1年 国境の島が危ない】
「いつ戦争起きても不思議でない」
尖閣周辺で日本漁船の拿捕を狙う中国
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130903/plt1309030721000-n1.htm
8月7日、魚釣島周辺で領海侵犯した中国の「海警」(中央)と、警戒に当たる海保の巡視船など(仲間均市議提供)
中国が、沖縄県・尖閣諸島に対する領土的野心をあらわにしている。中国海警局の艦船を連日のように周辺海域に侵入させて、日本漁船の拿捕(だほ)を狙っているうえ、同国初の強襲揚陸艦を上海で建造しているのだ。これに対し、安倍晋三政権は日本の領土・領海を断固守るため、自衛隊の離島防衛態勢を強化し、海上保安庁も巡視船や人員を増強する方針を打ち出している。危機迫る尖閣の現状について、地元・八重山日報の仲新城誠編集長が迫った。
昨年9月11日の尖閣諸島国有化後、領有権をめぐる日中の対立は激しさを増す一方だ。中国は「日本が国有化で挑発した」と、日本に責任があるかのような主張を展開。「国有化は原爆投下のようなものだ」とまで非難する政府高官もいる。
しかし、石垣島から見ると、中国の「反発」などポーズでしかない。なぜなら、中国の攻勢は、国有化後に突如として始まったのではないからだ。
「中国が教科書問題に反発している」
石垣島で冗談交じりにそう言われたのは2011年8月24日。中国の監視船が尖閣周辺で初めて領海侵犯した日である。
前日、尖閣が日本の領土であることを詳述した育鵬社版の中学校公民教科書が、八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)で選定され、地元マスコミは大騒ぎした。国有化の1年も前だ。
さらに、中国当局者は国有化の半年も前に「日本の実効支配を打破する」と公言。石垣市議会はこの発言に抗議決議したが、中国は何の反応もしなかった。
尖閣周辺での調査船の出没、石垣島近海での潜水艦の領海侵犯…。日本が尖閣の実効支配強化を怠ってきた間に、中国の動きが活発化する兆候は至るところにあった。地元住民は「中国はいずれ、国力を充実させた時点で尖閣を取りに来る」とうわさしていた。
そして今や、中国のGDP、軍事費は日本を凌駕し、世界第2位の水準に達した。時は来たわけだ。国有化を知った中国は内心、「これで尖閣強奪の口実ができた」と、ほくそ笑んだに違いない。中国にとって、国有化とは好機到来だったのだ。現在、中国公船はほぼ連日、24時間体制で尖閣周辺を航行している。
今年8月7日、領海侵犯した中国海警局の船4隻は、尖閣周辺を航行していた石垣島の漁船、高洲丸に急接近。スピーカーで「ここは中国の領海だ。ただちに退去せよ」と警告した。さらに「海警」は高洲丸と対峙し、過去最長の28時間、領海内に居座り続けた。高洲丸を拿捕するため、船内のボートを海に下ろそうとする示威行為も見せたという。
高洲丸に被害がなかったのは、海上保安庁の巡視船約10隻が必死の警護を続けたからだった。乗船した石垣市議の仲間均氏は、国境が踏み荒らされている現状に「いつ戦争が起こっても不思議ではない」と危機感を募らせる。
日本人が「国有化が危機を引き起こした」と罪悪感を抱いていては、対応が後手に回るだけだ。中国の野心こそ危機の原因であることを直視し、今後の対応を考える必要がある。
■仲新城誠(なかあらしろ・まこと)
1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に石垣島を拠点する地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県の大手メディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に「国境の島の『反日』教科書キャンペーン」(産経新聞出版)など。