防衛大綱改定
安倍晋三政権は防衛力整備の長期指針となる「防衛計画の大綱」を年末に改定する。
これに向けて防衛省がまとめた中間報告には、離島の防衛や奪回にあたる海兵隊の機能を自衛隊に持たせる方針を明記するなど具体的な抑止力強化策が盛り込まれた。
日本を狙う弾道ミサイルの発射元を無力化する、敵基地攻撃能力の保有にも含みをもたせた。安全保障政策の見直しを具現化しようとするこうした取り組みを評価したい。
大綱では保有を明記するなど一層の踏み込みが必要だ。
中間報告は、防衛省が国の守りには最低限必要だと判断した内容だ。今後の政府内での検討作業でさらに具体化を図り、日本の平和と安全を守り抜くことができる大綱を実現してほしい。
北朝鮮の弾道ミサイル開発は、長射程化の技術を向上させるなど新たな段階に入った。北の核・ミサイルは、日本の安全に対する重大な脅威だ。現在は報復能力を全面的に米軍に頼っており、日本はまったく保有していない。自分の国を自分で守る抑止力を持っていないことが問題なのだ。
首相は5月の国会答弁で、「相手に思いとどまらせる抑止力の議論はしっかりしていく必要がある」と語った。公明党は敵基地攻撃能力の保有に慎重だ。
相手の一撃を甘受する「専守防衛」に象徴されるように、防衛政策の基本的な方針により、十分な抑止力が働かない状況が作り出されてきた。日米同盟強化のため、集団的自衛権の行使容認も喫緊の課題となっている。
尖閣諸島の奪取をねらう中国は、東シナ海から西太平洋への進出を図っている。中国軍の早期警戒機が24日、沖縄本島と宮古島の間の公海上を通過する「特異な行動」(安倍首相)をとった。中国海軍の艦艇が日本列島を1周する示威行動もした。
中間報告は離島防衛のため、機動展開能力と水陸両用機能(海兵隊機能)の確保を打ち出した。
日本が抑止力の強化に努めることにより、中国の高圧的な行動や、偶発的な軍事衝突など不測の事態を防ぐことができるとの考えは妥当なものだ。
日本を守れる実効性の高い防衛政策を確立し、それに基づいた防衛力整備を図ることが何よりも重要である。