慰安婦に関する国際誤解を解くことが問題の本質だ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





西岡 力ドットコム より。




 私は慰安婦問題 について1992年から、20年以上、論争に加わってきた。その立場から今回の橋下発言、西村発言について一言コメントしたい。

 まず、両発言は一部、不適切だったと思う。すなわち、橋本発言における、現在の在日米軍に風俗利用を勧めた部分と、西村発言における現在、日本で不法に活動している韓国 人売春婦と戦前の慰安婦を同一視するかのような部分は、軽率で不穏当な発言だった。

 過去、貧困という本人の責任ではない理由で慰安婦にさせられた女性たちと、現在、豊かな日本韓国の風俗業、売春を同一視するかのような発想があるからだ。いま、豊かになり、女性の地位が上がった日本、韓国 、そして米国では、過去に貧困により売られた女性たちへの同情が高まり、現在の価値観で過去を裁く議論が強まっている。

 だから、慰安婦問題 に接近するときは、あくまでも当時の状況に限定し、吉田清治や朝日の虚偽により、当時でも許されない軍による組織的強制連行があったかのような誤解が国際的に広がっていて、それを助長したのが河野談話 だという論点を強調するべきだ。

 実は、今回の慰安婦を巡る論議の中で、読売新聞が注目すべきことを主張した。すなわち、朝日新聞の誤報や吉田清治の虚偽証言などにより日本の官憲が組織的に慰安婦の強制連行を行ったという誤解が生まれ、河野談話 の記述のまずさによってその誤解が広まったと批判している。

 橋本発言の2日後、515日付けで慰安婦問題 について社として以下のように解説した。

〈[Q&A]従軍慰安婦問題 とは 報道きっかけに政治問題化

 Q 従軍慰安婦問題 とは。

 A 1992年1月に朝日新聞が「日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していた」と報じたことがきっかけで、政治問題化した。特に「主として朝鮮人女性を挺身(ていしん)隊の名で強制連行した」と事実関係を誤って報じた部分があり、韓国の反発をあおった。

 Q 強制連行はあったか。

 A 元「労務報国会下関支部動員部長」を名乗る吉田清治氏が83年に出版した著作「私の戦争犯罪」で、韓国 済州島 で“慰安婦狩り”にかかわったとしているが、研究者によって信ぴょう性が否定されている。政府は慰安婦の強制連行について「直接示す記述はない」と明確に否定している。(以下略)〉

 また、516日社説で河野談話 の見直しが必要だとして以下のように明確に言い切った。

慰安婦問題 に関する1993年の河野官房長官談話には、資料的な根拠もないまま、日本の官憲が組織的、強制的に女性を慰安婦にしたかのような記述がある。そうした誤解を招くような記述は、事実を踏まえた見直しが必要だ」。

 これらの点は20年以上、私が繰り返し主張してきたことであり、当初はごく少数だったのが、日本最大部数の読売の社論までが賛成したかと感慨深いものがある。 

 橋下氏も西村氏も、まさに読売新聞と同じく、内外で慰安婦=セックススレーブという組織的強制連行を前提にした誤解が拡散し続けて、日本の名誉が落とし名誉が貶められていることへの怒りと危機感が発言の背景になった。このように感じる価値観と歴に認識は、日本人として当たり前のものだ。この点で、私も橋下発言、西村発言の問題意識を支持する。このことを内外に広く伝えなければならない。

 そのためにも、橋下氏は早く、風俗利用を勧めたという部分の発言を撤回し、自分が主張している論点は、客観的にいって日本の言論界をまっぷたつに割っている片側の議論であって、過激でも不謹慎でも戦前賛美でもないということを強調すべきだ。

 逆に、みんなの党は読売、産経読者とも価値観が違うと主張しているのだという事柄の本質を、きちんと伝えれば、維新への信頼は回復するだろう。

 その意味でも、西村議員を除名したのは間違ったメッセージだ。西村議員はすでに不適切な発言の撤回と謝罪行っている。その上に除名をしたので、西村議員が言おうとした国際社会がセックススレーブという誤解を信じてしまっていることへの危機感を維新は無視する結果となった。

 維新は早急に党見解を出し、不適切な発言の撤回と謝罪をした上で弁、今日の価値観に基づき女性の人権を大切にするという大前提を踏まえた上で、事実に反する国際誤解、反日誹謗には断固として戦うという政策を打ち出して、逆にみんなや民主党 自民党 リベラルとの違いを打ち出すべきではないか。

 また、安倍政権も、国際誤解を解くために読売も主張している河野談話 の見直し作業を開始すべきだ。その際、日本国内で吉田清治の虚偽証言と、朝日新聞の誤報で、軍による組織的な強制連行があったかのような誤解が広まり、河野談話 の一部表現がその誤解を助長したという日本国内ではかなり広まっている事実を国際社会に分かりやすく説明した上で、河野談話 を否定せず、それをより正確に説明する新たな官房長官談話を出すべきだと考える。

 すでに朴槿恵大統領の硬直した反日外交に韓国 内でも疑問の声上がってきた。日本はあくまでも韓米同盟を維持する韓国 中国 とは違い、価値観と北朝鮮 という共通の安保上の懸念を共有する友好国だから、朴槿恵政権と信頼関係を築きたいとする現在の安倍首相の姿勢を維持すべき。朴槿恵政権が国益を考え過去と領土の棚上げを行う可能性はある。

 趙甲済・元月刊朝鮮編集長(産経正論メンバー)の領土・歴史棚上げ論を韓国 内で公然と主張している。その上、陳昌洙・世宗研究所日本研究センター長 竹島問題 で事実上の棚上げ論(現状維持、韓国 が日本の言動無視)を提案し、そのために戦略的対話を日本に求めた(毎日521日)。これらの言説がどこまで韓国 内で支持されるか見守りたい。