与那国配備 防衛空白の解消に全力を
南西諸島防衛のため沖縄県・与那国島に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配備する計画が、宙に浮きつつある。
用地取得費をめぐり、防衛省と与那国町との間で折り合いがつかないことが原因のようだが、宮古島以西に自衛隊部隊を配置していないという国の守りの空白を放置することは許されない。
中国が領海・領空侵犯を繰り返している尖閣諸島にも近い。日本自らの抑止力の強化が求められている。そのことを関係者は強く認識し、配備計画の実現に全力を挙げるべきだ。
日本最西端に位置する与那国島は、尖閣諸島まで約150キロの距離にある。沿岸監視部隊は100人規模の要員が常駐し、移動式警戒管制レーダーなどによって、周辺での艦艇や航空機などの活動を監視するのが目的だ。
防衛省は平成27年度末までの部隊創設を目指し、24年度中に26ヘクタールの用地を取得する予定だった。
だが、地代は1億5千万円と想定していたのに対し、町側は10億円を要求した。防衛省は24年度予算で10億円を計上しているが、これは測量調査や移転補償費を含むものだ。要求する地代には応じられないとした。
小野寺五典防衛相は「地元の理解が得られない状況なら、計画全体を含め検討する」と語り、地元からの要請という前提が崩れるなら、計画自体を見直す可能性にも言及した。
だが、計画が頓挫すれば、東シナ海から太平洋へと活動範囲を広げる中国海軍などへの警戒・監視が困難になるうえ、南西諸島の配備計画全体にも悪影響が出る。
事態の打開に向けて、与那国町も自衛隊配備の意義について柔軟に考えてもらいたい。
町側も、島の振興に加え、安全保障上の観点から積極的に誘致に賛成してきた経緯がある。地元町議会の誘致決議や自衛隊誘致の推進派の町長当選を受けて、23年度から予算化された計画が、なぜこうまで手間取るのか疑問だ。
米軍普天間飛行場の移設問題もあり、防衛省は沖縄県の自治体との協議に慎重になっているようだが、迅速な用地取得に努めてほしかった。
自衛隊のほか、警察、海上保安庁も含めた南西諸島の警備強化を掲げてきた自民党も、部隊の着実な配備を後押しすべきだ。