お札の刷り増しで国富増やした米国。
金価格はドル札刷るほど上昇。
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130322/ecn1303220709002-n1.htm
「アベノミクス」に忠実な黒田東彦(はるひこ)日銀総裁体制が発足した。継続的におカネを大量に発行する量的緩和政策(QE)への転換が始まるのだが、世界的にみると、日本も遅ればせながらQE競争に参入するわけである。ところで、世界で最もこのお札刷り増しゲームで国富を増やした国はどこでしょう?
答えは米国。次はドイツである。
お札を刷ればもうかるって、そんなうまい話がどうして成立するのか。
リーマン・ショック後、米連邦準備制度理事会(FRB)はドル資金を2倍、3倍と刷り、紙くずになりかけた住宅ローン証券化商品や国債を大量に買い上げてきた。じゃぶじゃぶのドルは株式市場に流れ込んで株価を引き上げるばかりか、国際商品市場にも向かう。
その結果、原油や穀物市況が高騰すると同時に、貴金属の金(きん)価格を押し上げる。原油や穀物は価格が上がりすぎると、実需が冷え込むので、反落するのだが、金の場合は、投資家や個人が安全な資産として好む。歴史的に戦乱に絶えずさらされてきた中国の人々は特にそうだ。
主要国がお札を刷れば刷るほど、余ったカネが金市場に殺到する。ドルやユーロ建ての国債や株式など金融資産で運用するよりも、もっと手堅くもうけられると考える。ドルはQEのおかげで安くなるが、金のドル建て価格はドル安分を補って余りあるほど、上昇してきた。
グラフは主要国の公的金準備の時価総額で、米国がずば抜けて「国富」を増やしていることがわかる。
米国は世界最大の公的金準備国で保有量は8133トンに上る。米政府・FRBは金を買い増ししたわけではないが、金高騰のおかげで時価総額はリーマン後2000億ドル以上も増えた。世界ゴールド・カウンシルの調べでは、米国の公的準備総額の75%が金で占められる。ドイツも3391トンを保有し、同72%に達する。
対照的に日本の金保有量は765トンで、同3・2%に過ぎない。日本は暴落不安がつきまとう米国債を中心に1兆2200億ドルの外貨準備(金を除く)を保有しているが、金準備は407億ドルに過ぎない。
日本はリーマン後の超円高でドル建て資産を中心に50兆円(約5200億ドル)前後もの為替差損を被っている。金の市場価格はFRBがドル札を刷れば刷るほど上昇し、ドルの対外通貨レートは逆に下がるのだから、債務国米国は富み、債権国日本は貧しくなる仕組みなのだ。
日本は今後、どうすべきか。白川方明(まさあき)前総裁の日銀は超円高をもたらし、デフレ不況を深刻化させ、国富を喪失させた。黒田日銀はこれから大胆な金融緩和に踏み切ると約束しているが、お札を大量発行するなら、その一部で金を買うか、あるいは黒田氏出身の財務省と話し合って政府保有の米国債をFRBに売って米保有の金と交換することなども考慮してよいはずだ。
(産経新聞特別記者・田村秀男)