欧米諸国に10年の後れ、他国との共同開発・生産は不可欠。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130305/plt1303050709000-n1.htm
ステルス戦闘機「F-35」(米ロッキード・マーチン社提供、共同)
菅義偉官房長官は1日、最新鋭ステルス戦闘機F35の導入に伴い、日本国内で製造した部品について「武器輸出3原則」の例外とする談話を発表した。
そもそも、米国など9カ国で国際共同開発・生産をしてきたF35をわが国も欲しいということで、後からその枠組みに参加し、製造・修理に関わることを何とか許されたのが日本の位置付けである。修理などを自国でできるかどうかは戦闘機の稼動率に大きく関わり、スクランブル(緊急発進)が頻発している現状を考えれば日本の安全保障上極めて重要だ。
今回、F35をイスラエルが購入する可能性があるとして、紛争国への輸出を禁じた「武器輸出3原則」が形骸化するという批判が出ているが、そんなことは同機を買う、正確には同機の「システムに参加する」と決めた時点で想定され、織込まれているべきことだ。
共同開発には乗り遅れ、入ってみたら予想外の問題が生じたというのでは、この国がいかに防衛生産・技術基盤維持に無策であったかの証左といえる。その状態で次期戦闘機を選んでしまったのだから、これから現政府のやることは多い。米国主導の「グローバルロジスティックス」に日本がいかに関わるかなど、機種選定だけではないさまざまな決断が本来必要な買い物なのである。
今回の官房長官談話を受け、「防衛産業は歓迎している」といったニュアンスの表現が目につくが、思い違いである。これは航空自衛隊の運用に資するものであり、それはひいては国民の安全・安心に直結する。
また、共同開発・生産は参加国間の戦争回避にも繋がることから、日本の国益にかなうとも言えるだろう。今回の談話を「防衛産業のため」などと思っている向きがあれば、日本人として今すぐ認識を改めるべきだ。
これまで何度も述べているが、日本のほとんどの防衛産業は積極的に輸出や共同開発をしたいなどと望んではいない。企業のマイナスイメージなど、さまざまなリスクを伴うし、国内で完結することが望ましい。
しかし、防衛予算は縮小の一途をたどり、中でも研究開発は諸外国と比べ著しく低水準の1500億円前後を陸海空で取り合う構図である。「欧米諸国に10年は後れを取ってしまっています」と溜息をつく技術者が多い中、これ以上他国に水をあけられないよう最新技術にアクセスするためには、共同開発・生産に加わるしかない。
わが国はこれまで防衛の研究開発費をカットし続けた。そのツケが今、回ってきている。国防の技術と運用をいかにして保つのか、それこそが今回の談話発表に伴い私たちが考えるべきことではないだろうか。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。