実質高金利と円高を維持。
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130125/ecn1301250710004-n1.htm
日銀は形の上では2%のインフレ目標を導入し、金融緩和を「追加」したが、だまされてはいけない。日銀は緩和の看板に隠れて実質ベースで国際的にみて高水準の金利政策を続けている。対照的に米国連邦準備制度理事会(FRB)は実質でマイナス金利政策である。これでは円高是正のトレンドはいつ反転するかわからない。
いきなりだが、グラフをよく見てほしい。2008年8月以降の日米の短期金融市場名目金利から日米それぞれのコアコア消費者物価(エネルギーと食料品を除いた総合物価指数=CPI)前年比上昇率を差し引いた実質短期金利と円ドル相場の推移である。日米間の金利差が開けば開くほど、円高に動く。金利差は1年前に3%を超え、円は76円台まで上昇した。ここへきて金利差は2%台まで縮小したが、依然としてかなりの開きがある。
それでも円高是正が急速に進んだのは、安倍晋三首相が日銀に大胆な金融緩和を求めたためだ。円高是正が定着するためには、着実に日米金利差を縮小させる必要がある。ところが日銀は金融機関が日銀に預ける当座預金の大半について0・1%の利子を払って、名目金利水準を絶えず0・1%に保とうとしている。日銀は「事実上のゼロ金利」と言い、メディアにそう書かせてきたが、虚偽情報である。
実質金利が高いと円高になるのはなぜか、と読者はたずねるだろう。ドルの預金など金融資産を持つ場合、その元本はインフレ分だけ資産が目減りする。名目金利がインフレ分より高ければ目減りは避けられるが、FRBの政策で名目金利がインフレ分を下回るので目減りが進む。すると、米国の投資家や金融機関は目減りしない金融資産を持とうとするので、ドルが売られる。
対照的に、デフレの日本では円建て金融資産が利子ゼロでも価値が上がる。そのうえに0・1%のプラス名目金利がつく。従って、投資家や金融機関は円建て金融資産を買う。こうしてドル売り、円買いが進む。リーマン・ショック後の超円高を引き起こしてきたのは日米の実質金利差なのだが、日銀はそれを承知で円高政策をとっているのである。
円高であれば、輸入物価を押し下げる要因となるので、日銀が絶えず恐れるインフレを抑制できる。もうひとつ、日銀は天下り先に短資会社という、短期金融市場の仲介業務を行う業者がいる。名目金利が0以下になれば、銀行などはゼロ金利以下の資金を日銀から直接調達すれば済むので、短資会社は不要となる。
日銀政策が超円高を招き、デフレを加速させ、国民所得が大きく縮小し、若者の雇用機会が奪われてきた。日銀の罪は極めて大きい。「日銀の独立性」を盾にする白川方明総裁に同調してきた日経新聞などメディアも共犯者である。安倍政権はメディアが繰り出す雑音にかまわず、日銀に対して名目金利ゼロ、実質マイナス金利政策への転換を強く迫るべきなのだ。
(産経新聞特別記者・田村秀男)