【いにしえの教え】
十七条の憲法(1)和を以って貴しとなし
一に曰(いわ)く、和を以(も)って貴(とうと)しとなし、忤(さから)うこと無きを宗(むね)とせよ。人みな党(たむら)あり、また達(さと)れるもの少なし。ここをもって、あるいは君父(くんぷ)に順(したが)わず、また隣里(りんり)に違(たが)う。しかれども、上和(かみやわら)ぎ下睦(しもむつ)びて、事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、すなわち事理(じり)おのずから通ず。何事か成らざらん。
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【現代語訳】和を最も大切なものとし、争わないようにしなければなりません。人は仲間を集め群れをつくりたがり、人格者は少ない。だから君主や父親にしたがわなかったり、近隣の人ともうまくいかない。しかし上の者が和やかで下の者も素直ならば、議論で対立することがあっても、おのずから道理にかない調和する。そんな世の中になると何事も成就するものだ。
これは聖徳太子(575~622年)の有名な言葉だ。当時、朝鮮半島に対する外交方針や皇位継承問題などで氏族間対立が続き、崇峻(すしゅん)天皇暗殺という未曽有の事件も起きる。こんな時代に直面していた太子は日本最初の規範を制定するにあたり「和」の大切さを第1条に示した。
いまに生きるわれわれに対する戒めである。
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いにしえの教えは現代にも通じ、改めて重みを感じるものもある。聖徳太子の十七条の憲法から、ひもといていく。