尖閣守るだけでは足りない。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【風を読む】論説副委員長・高畑昭男 





尖閣諸島への攻勢がとまらない。先週末も、中国の海洋監視船4隻が日本領海に侵入し、海上保安庁の巡視船に「(尖閣は)中国固有の領土」などと応答した。

 中国公船の領海侵入は、日本の尖閣国有化後14回目という。習近平新体制下で攻勢が強まることはあっても、収まる見込みはなさそうだ。

 力ずくで海洋権益を拡大する中国の問題行動は、尖閣諸島のある東シナ海だけでなく南シナ海でも大きな摩擦を生んでいる。だとすれば、日米も2つの海域を統合して対応していく視点が必要ではないか。

 先週末、東京で開かれた日本戦略研究フォーラムと米バンダービルト大共催のシンポジウム(産経新聞後援)でも、こうした問題意識が繰り返し指摘されていた。

 「日米同盟における東・南シナ海問題の重要性」を議題としたこのシンポジウムでは、尖閣問題の現状に加え、フィリピン、ベトナムの専門家からも報告があった。両国の資源保護活動や漁業などに対する中国艦船の露骨な妨害や侵害の実例が報告され、外交面でも東南アジア諸国の連帯が分断されがちだという。

 とりわけ印象に残ったのは、アジア太平洋の平和と安定の秩序を守る「公共財」とされてきた日米同盟の対応に東南アジアが目をこらしていることだ。尖閣防衛は無論のこと、中国の行動を抑止し、航行の自由などの規範を守らせることが肝要だ。同盟が東シナ海だけに気を奪われていては大きな責務を果たせない。

 討議では、尖閣周辺に日本独自の機動展開部隊を配置する構想や、日米と少数の有志国で「海洋安全保障連合」を結成するミニラテラル(少数の多国間協力)構想などが紹介された。冷戦時代に日本が担った1千カイリのシーレーン防衛を2倍に延ばす可能性も話し合われた。

 これらを直ちに実現するには課題も多いが、日米が東・南シナ海を一体的にとらえ、東南アジア、豪州、インドなどと連携する視野と戦略を見失わないようにしたい。