東南アジア諸国からの高いニーズ。
先日、ニッポン放送で聴いた、作家の佐藤優氏のニュース解説に、「さすが!」とうなずいた。
取り上げたのは、来夏に打ち上げる予定の新型小型ロケット「イプシロン」に関する記事。この固体燃料ロケット技術は日本がいつでも弾道ミサイルを作れることを示していて、意味合いは大きいというもの。誰もなかなか口にしないことだが、それくらいハッキリ言わないと、何かと無駄遣い探しに躍起になっている今の日本では国防上の重要性は伝わらない。
「できるかもしれない」と思わせることは(自国民は無自覚でも)他国には脅威であり、外交力になる。こうした可能性を抑止力にすることができるのは、これまで、コツコツと研究開発を積み重ねてきたからこそだ。
今現在は価値がないと思っても我慢強く続ければ将来、国の財産になる。つまり、今の事情でその地道な取り組みを諦めることは、次世代に対する無責任とも言えるのだ。そういう物差しで、さまざまなことを判断する必要があるのではないか。それに、潜在能力を持っていることは、何かを輸入するにしてもバーゲニングパワー(=交渉力)になる。
もう1つ今、着手しておきたいことがある。それは、防衛装備品の輸出に道を開くことだ。
ただ、誤解されては困るのは、日本の防衛産業は基本的に輸出に積極的ではない。この点を、世の中ではよく勘違いされている。
企業にとって防衛装備品の製造は「日本の自衛隊のためだからこそ」というスタンスであったり、あるいは「低利でも収入の安定性があるから続けてきた」のであり、他国に提供する動機はない。それに激しい競争に飲み込まれるリスクもあるのだ。
その背中を私たち国民が押そうということだ。
日本は純国産でなくてもライセンス国産で高い可動率を維持しているが、日本と同じように輸入した国ではすでに製造が終わったために部品が枯渇し、飛行機などが動かなくなっているケースも多い。これらの国々は、日本が独自製造した部品や整備ノウハウを欲しがっている。
また、東南アジア諸国などからの日本の高性能な装備品ニーズは高い。まずは輸送機など汎用(はんよう)性の高いものや各種部品などから検討すべきだ。購入国との関係構築、そして数千社の中小企業への波及効果も期待できる。ODAを活用し、平和貢献策とすることも考えられるだろう。
GDPマイナス成長に肩を落としている暇はない。わが国には防衛産業という可能性がある。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。