拉致再調査の履行が先だ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










【主張】日朝政府間協議






日本と北朝鮮による4年ぶりの政府間協議は、「双方が関心を持つ事項について幅広く議論する」ことでとりあえず一致した。だが、拉致問題が協議対象に含まれるかどうかについては北の確約を取れないままだ。

 日朝間で拉致問題を棚上げにした協議などあり得ない。日本政府は、カードを小出しに交渉を優位に運ぼうとする北の常套(じょうとう)手段に乗せられてはならない。

 次回協議は、今回の課長級から「より高いレベル」(局長級)に上げ、今月中旬にも北京で開くという。外交当局には「拉致問題は日本国民の生命と安全に直接かかわる国家の重大事」との原則的立場を貫く強い覚悟を求めたい。

 今回の政府間協議は当初、局長級で行われる予定だったが、北側の意向で課長級による予備協議に格下げされた。協議が始まってからも、北は拉致問題を議題にするよう求めた日本の提案に難色を示し、予定された日程を1日延長した。協議はすでに北のペースで進みつつあるともいえる。

 北朝鮮が提案してきた日本人の遺骨収集や墓参などは、たしかに重要な懸案事項だ。厚生労働省によると、先の大戦末期の混乱で今も約2万1600柱の遺骨が北朝鮮に残されたままだ。今回の協議が日本側も含めた現地調査や遺骨の返還、遺族の墓参などにつながれば意味がある。

だが、北朝鮮はこの時期になぜ日本側に遺骨問題を提起したのか。遺骨収集という人道的問題を持ち出すことで、拉致問題などで北に厳しい日本の国内世論を懐柔する狙いも指摘されている。

 政府部内にも、政府間協議を継続中とすることで、「北朝鮮側に制裁強化を免れる論拠に利用されかねない」(松原仁拉致問題担当相)と警戒する見方がある。北の真意を読み誤ることなく、拉致問題を前に進める必要がある。

 北朝鮮は平成20年の協議で拉致問題の再調査を約束した。調査対象も政府認定の拉致被害者だけでなく、拉致の疑いがある特定失踪者に広げるとしていたが、反故(ほご)にされたままだ。

 横田めぐみさんの生存情報も報じられている中で、北が協議の再開でまずなすべきは、日本との再調査の約束を果たし、生存者の帰国を早期に実現させることだ。日本政府はその履行を改めて北に強く迫るべきだ。