今から19年前、平成5年8月は日本中が「政権交代」に酔っていた。7月の総選挙の後、社会党や日本新党など当時の非自民勢力が結束し、細川護煕(もりひろ)連立内閣を誕生させたからである。昭和30年の結党以来続いてきた自民党政権に、終止符が打たれたのだ。
▼マスコミの報道も、新政権への期待や新首相の「人となり」であふれていた。だが当「産経抄」だけはそれを押しのけ、2日連続という異例さで「河野談話」を取り上げた。政権交代直前、宮沢喜一内閣の河野洋平官房長官が慰安婦問題で述べた談話についてだった。
▼「沈痛な顔で発表した河野官房長官の談話と、政府の調査報告書を読みあわせてみて驚いた」という書き出しである。報告書には、慰安婦の「強制連行」を認めるものが見当たらない。それなのに談話は「歴史の真実」として認めた。まるで「逆さまだ」と指摘している。
▼慰安婦問題は日本の一部の虚偽報道などをもとに、韓国が政治問題としてきた。日本側の調査では「強制連行」の事実は全く見つかっていない。だが政権末期に決着を急ぐ宮沢内閣が、韓国の「元慰安婦」の一方的証言をもとに談話を発表したのだ。
▼これに対し「産経抄」は「『歴史の真実』は次代に重い責任を負った」と、将来への悪影響に懸念を示した。「身内」とはいえ慧眼(けいがん)には敬服する。自国を貶(おとし)めるような談話が19年後、李明博大統領の竹島上陸など韓国の横暴の理由にされているからだ。
▼そんな「河野談話」の危うさに気づきながら、これを踏襲し続けてきた歴代内閣も情けない。「事なかれ主義」という日本外交の悪癖そのものだ。今きっぱりと決別宣言しなければ、未来永劫(えいごう)に隣国から脅され続ける。