【主張】巡視船の増強を急ぎたい
中国の漁業監視船が11日に続いて12日も尖閣周辺の日本領海内に侵入した。野田佳彦政権の尖閣国有化方針に対する重ね重ねの挑発かつ威嚇行為であり、許し難い。
外務省の佐々江賢一郎事務次官は再び、程永華駐日中国大使を呼び「極めて遺憾であり、再発防止策を強く求める」と強く抗議した。当然である。
また、藤村修官房長官は尖閣諸島への上陸許可申請があった場合の対応について「上陸の必要性や所有者の意向、平穏かつ安定的な維持管理などを総合的に勘案して判断する」と述べた。国に先がけて尖閣購入を計画している東京都が申請しても認めないとした一部報道に関しても「そういう事実はない」と否定した。
これも当たり前のことだ。
中国が領海侵犯を重ね、尖閣奪取の意図をますます明確にしてきているときに、国が東京都と牽制(けんせい)し合っている場合ではない。互いにできることを確認し、協力できることは協力すべきである。
小笠原諸島や沖ノ鳥島を管轄する東京都は漁業調査指導船を4隻保有している。石原慎太郎都知事はこの船を使って尖閣での調査を行いたい意向だ。国は都の上陸を認めるべきだ。
尖閣を管轄する石垣市も環境調査などのための上陸許可を求めてきたが、退けられている。石垣市の上陸も認めてほしい。
ただし、いずれの上陸調査も、海上保安庁の巡視船などによる万全の警備が必要だ。
国有化の方針を示すだけでは、日本固有の領土である尖閣諸島を守り切れない。石原氏は先月の衆院決算行政監視委員会で、都ができることとして「魚礁設置」などを挙げ、「飛行場や港(の建設)は国がすることだ」と促した。
中国の領海侵犯後、中国の外務省報道官と国営新華社通信はそろって、尖閣周辺海域への中国漁船の進出を示唆する見解を発表した。中国国家海洋局所管の海監総隊幹部が「日本が釣魚島(尖閣諸島の中国名)問題で挑発し続けるなら、一戦も辞さない」と発言したと台湾紙が伝えた。
中国の武装した漁船群が大挙して尖閣に接近してきた場合などに備え、巡視船の増強や海上保安官の増員を急ぐべきだ。巡視船だけで対処しきれない場合の自衛隊法に基づく自衛隊の出動態勢なども準備しておく必要がある。