【産経抄】7月14日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










「これまでに経験したことのないような大雨。厳重に警戒を」。おとといの早朝、気象庁が熊本・大分両県を対象に「これまでに聞いたことのない」気象情報を発表したときは、少々大げさではといぶかったが、確かに未曽有の豪雨だった。

 ▼気象庁は「住民への避難呼びかけは自治体の役割」との理由で、危機感をあおりかねない表現で警報を出すのを自粛してきた。そんなお役所仕事では、助けることのできた命も助けられないのを思い知らされたのが、昨年の東日本大震災だった。

 ▼大地震発生直後、気象庁は間髪を入れず、津波警報を出した。だが、最初の予想値が低く、これまで津波警報を出しても潮位の変化がほとんどない事例が大多数だったため、住民に切迫感が伝わらなかったのだ。

 ▼あのとき、「これまでに経験したことのないような大津波。一刻も早く高台へ」という警報を出していれば、という思いが、役所の重い腰をあげさせた。今夏から気象災害の危険性が高い場合は、短文で切迫感のある気象情報を出せるようになったのもその流れだ。

 ▼今回の気象情報の表現方法が本当に役立ったかどうかは今後の検証を待ちたいが、過去の教訓を生かそうという心意気は評価したい。逆に、大震災の教訓から何も学ぼうとしない御仁もいる。

 ▼さしずめ菅直人前首相はその代表だ。彼は自身のブログに福島第1原発事故について「原因の大半は事故発生の昨年3月11日以前にある」と記した。悪いのはすべて東電と役所で、首相だった自分には責任がないとは恐れ入った。事故直後にパニック状態になり、某官邸職員を「これまでに経験したことのない首相」とあきれさせた光景は二度と見たくない。