【産経抄】6月2日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










ソウルからきのう朝、妙な報道が流れてきた。日本政府が慰安婦問題について「3つの解決策」を提示した、というのだ。野田佳彦首相が韓国の李明博大統領に謝罪するというのだが、何をどう謝るのだろう。

 ▼両国政府とも報道を否定したが、火のないところに煙は立たない。昨年暮れ、京都で開かれた日韓首脳会談で、李大統領は延々と慰安婦問題を持ち出し、賠償請求権に関する政府間協議を求めた。さすがに野田首相は拒否したが、「知恵を絞りたい」と気を持たせる発言をしてしまった。

 ▼外交交渉の場で「京の茶漬け」は禁物だ、という話を老練な元外交官から聞いたことがある。京都人は、客が帰ろうとすると「ちょっとぶぶ(お茶)漬けでも」と社交辞令を言うが、もとより出す気はない。

 ▼落語には、浪速っ子が京の茶漬けを食べようと、わざわざ電車に乗って出かけるネタがある。韓国側は、社交辞令なのを十分承知の上で「そろそろ絞った知恵を見せろ」と揺さぶっているわけだ。もちろん、日本側が知恵を絞る必要は毛頭ない。

 ▼昭和40年の日韓請求権協定で韓国のみならず、日本側も朝鮮半島に残した53億ドル相当とされる資産すべてを放棄した。同時に日本は、当時の韓国の国家予算に匹敵する3億ドルの無償資金援助など多額の経済協力をした。

 ▼「漢江の奇跡」といわれる経済成長も、今や世界的鉄鋼企業となったポスコをはじめ韓国の有力企業の多くも日本の経済協力なくして今日はない。浪速生まれの大統領なら本当の歴史を教え、いつまでも過去に縛られてはいけない、と国民を諭すべきだろう。