永田町では不思議なことが世間より頻繁に起こるようで、党首が政権離脱を宣言した舌の根も乾かぬうちに部下が閣議に出て法案にサインしても誰も怪しまない。大半の部下が反旗を翻したのに、トップが辞めるでもなく、部下たちが脱党するでもないのも摩訶(まか)不思議だ。
▼国民新党は7年前、当時の小泉純一郎首相が推進した郵政民営化に強く反対した綿貫民輔、亀井静香両氏ら数人が自民党を脱党してできた。発足時の党首で神職でもある綿貫氏は、「競争で強いモノだけ勝ち残ればいい、という考えは日本国にあわない」と小泉改革を厳しく批判し続け、独特の存在感があった。
▼そんな山椒(さんしょう)は小粒でもピリリと辛い反骨の政党が変質したのは、綿貫氏が引退し、民主党と連立してからだ。連立の役得で総議員8人中、4人が大臣や副大臣・政務官の役職にありつき、親分がなんと言おうとポストにしがみつきたい気持ちはよくわかる。
▼よくわかるが、それでは政治家ではない。小欄は、亀井氏の言動に首をかしげることが多かったのだが、消費税増税法案の閣議決定が連立政権発足時の合意に反するから離脱する、というのは正論だ。
▼2年半前に結ばれた合意書には、「消費税5%は据え置く。選挙で負託された政権担当期間中に税率引き上げは行わない」とある。もし、連立を維持したまま消費税を上げるのであれば、新たな合意を結ぶ必要があり、それができないのなら連立を解消するのが筋だ。
▼郵政民営化見直しを見届けるために政権にとどまる、というのが残留組の言い分だが、政治家にはもっと大事な国民との信義を守る義務がある。政治家が筋を通さなくては民主主義は簡単に崩れ去ってしまう。