「原発全廃」案は無責任だ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










【主張】大阪市と関電






関西電力の筆頭株主である大阪市が、6月の関電株主総会で11基の原子力発電所の早期全廃を提案する方針を固めた。

 橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」は、国政進出も目標に掲げている。国内のほとんどの原発が停止する中で、代替電源のあてもないまま、自治体として原発廃止を求めるのは無責任に過ぎる。撤回を求めたい。

 大阪市と大阪府でつくる「エネルギー戦略会議」の株主提案骨子には「可及的速やかな全原発廃止」のほか、発送電の分離、電力事業と直接関係のない資産の売却なども盛り込まれた。原発の稼働を認めるのは、「電力が不足した場合に限る」としている。

 そもそも、原発は国のエネルギー政策の根幹である。政府は現在、東日本大震災を受けて今夏をめどに将来の電源構成などエネルギー基本計画の見直しを進めている。原発の代わりに火力発電を増やす場合、海外からの燃料安定調達やCO2の削減をどう進めるかなどの課題もある。一自治体で判断すべき問題ではあるまい。

 産業界には生産に影響を与えないため、原発再稼働を求める声も強い。大阪市の判断に、そうした意見は反映されているのか。

 また、原発の稼働を限定的に認めるとの提案も理解しがたい。原発は稼働するまでに地元との調整を含めて時間がかかり、いったん動き出せば、24時間体制で1年超の長時間運転が適している。

夏季など、電力が不足する場合には火力発電を追加で稼働させて対応している。提案は電源特徴の実態からかけ離れている。

 関電は他の電力会社に比べて原発利用率が高く、発電量の半分を原発で賄ってきた。だが、すでに11基の原発すべてが稼働停止に追い込まれ、今夏には20%前後の供給不足に陥るとも試算されている。大阪市は市内にある企業や家庭のためにも、まずは原発の再稼働で安定的な電力を確保するよう求める義務がある。

 今回の方針が出された背景として、関電側が大阪府、市などに電力供給に関する情報提供を怠ってきたとの指摘もある。関電には一層のデータ開示を求めたい。

 国が原発再稼働に明確な姿勢を示していないことも問題だ。原発が立地する自治体の理解を得るには、政府が原発の安全に責任を持つと宣言すべきである。