声に出して読みたい名調子。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










【消えた偉人・物語】小学国語読本 牛若丸





『声に出して読みたい日本語』(斎藤孝著、草思社刊)はベストセラーからロングセラーになっている。ここには古事記から高村光太郎までの古文、擬古文、文語体などの文章が多数収められている。日本語の響きの美しさや文体の見事さが脈々と伝わり民族の郷愁をそそるのであろう。

 昭和13年刊「小学国語読本」(尋常科用・巻三)に「牛若丸」がある。口語体ではあるが文章が引き締まっていて無駄がない。声に出して読み返しているうちに自然と覚えてしまう素敵(すてき)な魅力を備えている。

 《月 の よい ばん でした。牛若丸 が ふえ を 吹きながら あるいて ゐました。五でう の 橋 に 来ます と、「まて。」と いふ もの が あります。見る と、大なぎなた を もった、大きな 男 が 立って ゐます。牛若丸 は、「だれ だ。 なん の 用 か。」と いひました。「べんけい だ。その 刀 が もらひたい。 よい 刀 を 千本 あつめる つもり で、 九百九十九本 は 取った。もう 一本 で 千本 だ。 さあ、刀 を 出せ。」

 牛若丸 は びく とも しません。「刀が ほしい か。ほし ければ、取って みよ。」と いひました。べんけい は、大なぎなた を ふりまわして、 きって かかりました。牛若丸 は、ひらり と らんかん の 上 に とび上りました。

 べんけい が 上 を きる と、牛若丸 は 下 へ とび下ります。 右 を きれば、左 へ とびのき、左 を きれば、右 へ とびのきます。 強い べんけい も だん●● つかれて 来ました。 (以下略)》

 胸躍る名文ではないか。こういう文章をぜひ子供たちに出合わせたいものだ。(植草学園大学教授 野口芳宏)

●●=くの字点



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                  小学国語読本 牛若丸=23日午後 複写(栗橋)