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北極海を虎視眈々と狙う中国。


【笠原健の信州読解】

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120128/plc12012812000008-n1.htm





 中国が北極海進出を虎視眈々と狙っている。厚い氷原に覆われた北極海は資源開発や航路利用は困難だと長い間、思われてきたが、温暖化により状況は一変した。ロシア、米国、カナダなどの沿岸各国は天然資源が豊富に埋蔵している北極海の開発に乗り出しているが、沿岸国でもないのに北極海への参入に躍起となっているのが中国だ。

 

 昨年11月、中国の不動産企業がアイスランドで広大な土地を買い上げようとした問題で、アイスランド政府が法的な要件を満たしていないとして許可しないことを決めた-というニュースが流れた。この不動産企業は2億ドルを投じてホテルやゴルフ場などを建設するリゾート開発を計画していたとされる。しかし、買い上げようとした農地の面積はアイスランド国土の0・3%に当たる300平方キロメートルで東京23区の半分近い広さだったことから、アイスランド国内で大きな議論を呼び、アイスランド政府は「安全保障上の理由」で購入を認めなかった。

 

 この不動産企業を率いているのが黄怒波氏だ。駱英の筆名を持つ詩人でもある黄氏は中国共産党宣伝部から不動産や観光業に転身した人物で、この土地買収話の裏には中国政府の意向が働いていたのではないか、という憶測が流れた。実は黄氏によるリゾート建設は隠れみので、中国が北極海に進出する拠点づくりを沿岸国であるアイスランドで進めようとしていたのではないか、という見立てだ。

 

 アイスランドは米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危機で経済危機に陥ったが、それに救いの手を差し伸べたのが中国だった。中国とアイスランドは自由貿易協定(FTA)の締結交渉を進め、通貨スワップ協定を締結するなど経済的な結びつきを強めている。中国がアイスランドの首都、レイキャビクで構えている大使館は在外公館の中でも最大級の規模だ。

中国による北極海沿岸国へのアプローチはこれだけではない。民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞の授与で一時、関係が悪化したノルウェーとは昨年9月、北京にモエ石油・エネルギー相を招待して関係を修復。昨年11月にはデンマーク領で世界最大の島、グリーンランドの自治政府の閣僚が中国を訪問して、グリーンランド北部での資源探査について協議した。

 

 中国が北極海に強い関心を示してきたのはかなり早い時期からだ。1995年に最初の探検隊を北極点に送り込み、2004年には最初の北極研究所「黄河」をノルウェーのスバルバル諸島に設置した。2010年にも科学調査を実施し、ベーリング海やボーフォート海の海洋調査を行った。中国は「純粋な科学調査」を強調しているが、この主張を額面通りに受け取るのはかなりのお人よしだろう。中国がこれまで南シナ海や東シナ海でどんなことをやってきたのかを思い出せばいい。

 

 温暖化に伴って北極海は2013~2060年ごろには、夏季に氷が完全に溶解するといわれている。北極海海域には900億バレルの石油が埋蔵していると推定されており、厚い氷が溶けることで未発見の資源の探索も期待されている。

 

 さらに氷の溶解によってアラスカ沿岸、カナダ北岸を通ってアジアと北米を結ぶ北西航路やロシア沿岸を通ってヨーロッパを結ぶ北東航行の利用が可能になると予測されている。

 

 これらの航路の利用が可能になれば日本、中国、韓国などのアジア諸国にとっては大きな恩恵となる。パナマ運河やスエズ運河を経由すると2万キロ超だが、北西航路が利用できれば1万6000キロで済む。

中国はこうしたことを見越して着々と手を打っている。北極圏の環境保護などを話し合うことを目的とした沿岸諸国などが構成している北極評議会という組織があるが、中国はアドホック・オブザーバーとして参加しており、今後は英国やフランスなどと同様に常任オブザーバーとして参加できるように求めている。

 

 温暖化による北極海の変化は資源探査以上に安全保障上の意味合いが大きい。中国はアイスランドに対して港湾建設を提案していたという。気が付いたときにはアイスランドやグリーンランドの沿岸に中国が利用する補給基地ができて、海洋調査船だけでなく海軍艦艇が頻繁に寄港するようなことになっているかもしれない。

 

 ただ、米国とロシアはこうしたことを黙って見過ごさないだろう。米国にとっては、中国がアイスランドやグリーンランドに拠点を構築するのは自分の頭上で刃物を振りかざされるようなものだろう。ロシアにとってもバレンツ海やバルト海から大西洋に通じる出入り口部分を中国に扼されることになる。

 

 米国の地政学者、ハンス・ワイガードは冷戦時代に米国とソ連が全面戦争に陥った場合、主な軍事作戦は北緯50以北で行われ、決定的な作戦は北極圏内で行われる-と予想していた。その指摘通り、北極海の氷原の下には核ミサイルを積載した米ソの原潜が潜航し、北極海を挟んで米ソは大陸間弾道ミサイルや戦略爆撃機を配備してにらみ合った。

 

 温暖化は冷戦時代には予想もできなかった変化を北極圏に及ぼすはずだ。その変化は単に資源探査や航路開拓といった経済的な視点からだけでなく、地政学的な考察がなされるべき課題である。





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        黄怒波会長が買い上げようとしたアイスランド北東部グリムスタジールの土地。

                        ヘルズブレイズ火山を望む広大な荒野だ(ロイター)