【産経抄】1月25日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









 田中直紀防衛相が海賊のことを「人類共通の敵」と呼んだそうだ。ソマリア沖に派遣される海上自衛隊の第11次海賊対処部隊の出港式典でのことだ。いささかオーバーな気もするが、最近のソマリア海賊の動きを見ると世界的な「ならず者」であることは間違いない。

 ▼本紙報道によると、英ブルーネル大の教授が衛星写真でソマリア北東部の経済状況を調べた。中心都市では住宅が倍増、大きなビルも建設されている。交通量も増え、5年ほど前から都市の夜間照明の明るさが増してきた。明らかな「経済成長」である。

 ▼これに比例するように、海賊が船を奪ってふんだくる身代金は増えている。2010年には1件あたり最大900万ドルに急騰、計2億5千万ドル、200億円近くを稼いだ。笑うに笑えないが、もう地域の成長を支える「主要産業」だ。

 ▼その海賊から自国の船を守るため、艦船を派遣しなければならない日本など多くの国にとってたまったものではない。「ソマリア沖波高し」だが、波が高いのはこの海だけではない。アラビア半島を挟んで北側のホルムズ海峡にもにわかに緊張が高まっている。

 ▼欧州連合が核兵器開発疑惑のイランに対し、同国石油の全面禁輸方針で譲歩を迫った。これに対しイランが「それなら海峡封鎖だ」と警告してきたからだ。ペルシャ湾岸からの石油積み出しを武力で阻止するという脅しだ。これも一種の「海賊」行為といっていい。

 ▼しかし、いざ「全面禁輸」が発表されると、ただちに「封鎖」とはいかないようだ。さすがに「人類の敵」扱いされ、世界中を相手では利あらずと見ているのだろう。脅しに対しては、みんな一致して毅然(きぜん)と対抗するしかないのだ。