【主張】選挙制度。
19日の与野党幹事長会談は、衆院選挙制度改革に関する与野党協議会の再開で一致した。
民主党は「一票の格差」の是正策として、現行の小選挙区比例代表並立制の下、5つの県で選挙区を3から2に減らす「0増5減」を行うとともに、比例代表定数(180)を80削減する方針を打ち出している。
これに対し、比例代表での議席獲得を重視する公明党などの政党は「抜本改革の先送り」などと強く反発し、民主党案を拒否する構えをみせている。
選挙制度をめぐる各党の隔たりは大きく、短期間で合意を得るのは困難な情勢だが、最高裁が「違憲状態」と判断した最大2・30倍の衆院の格差解消は急務である。「0増5減」は緊急措置として位置付け、抜本的な改革を並行的に進める方策しかあるまい。
問題は、抜本改革を何のために行うのかである。平成8年に導入された小選挙区比例代表並立制は、重要政策に関する賛否など有権者の意思を国政に明確に反映させ、二大政党による政権交代を実現するなどの狙いがあった。
それまでの中選挙区制では、与党の自民党から複数の候補が出るため、派閥が前面に出て政策本位の選挙になりにくいなどの弊害も指摘された。
民主、自民両党は今も現行制度を維持し、比例代表定数をさらに見直すというのが基本的立場だが、公明党や共産党、みんなの党などは選挙区を廃止、削減して比例代表を中心とするよう主張している。公明党が提案する小選挙区比例代表連用制は、選挙区での議席が少ない政党に比例の議席を優先配分するものだ。政治的な生き残り策が絡み合っている。
これらの制度で、いったいどのような民意の反映、政権の構成などを構築しようとしているのかが見えてこない。選挙制度は民主主義の土俵であり、政党各党が生き残りをかけて激しい議論を交わすのは避けられないが、党利党略ばかりの改革論議では国民の納得は得られないだろう。
衆参両院とも選挙区と比例代表の2本立てという似たような選挙制度をとっている。両院を通じた選挙制度のあり方、二院制そのものの意義など、憲法にかかわる問題の検討を置き去りにしている点も否めない。抜本改革にはこうした議論が不可欠である。