防災グッズ、内容見直しへ。
地震などいざというときに備えた「非常持ち出し品」。平成7年1月17日に起きた阪神大震災の教訓を基に作成した「人と防災未来センター」(神戸市中央区)のチェックリストは多くの家庭や企業で活用されてきた。しかし、昨年の東日本大震災を機に内容を見直すことになった。「今の時代に十円玉50枚は必要ないのでは」「乾パンよりもチョコを」などの意見が相次ぎ、改訂作業を通して改めて防災を考える機会にも。3月末の素案とりまとめを目指している。
(岸本佳子)
◇
被災体験基に
同センターでは7年前、阪神大震災の被災経験を持つセンターのスタッフらが「非常持ち出し品チェックリスト」を作成した。震災体験を基に、一点ずつ吟味して必要な項目を選別。そのうえで、懐中電灯やロープ、粉ミルクなど最初の1日に必要な「1次持ち出し品」と、救援物資が届くまでの3日間程度に必要となる「2次持ち出し品」に分けて整理した。リストは、来館者に配布したり、ホームページで公開したりして、「数百万枚が普及したのでは」(同センター)という。
ところが作成から時間が経過し、阪神大震災当時とは社会状況も変化。「いつか見直さなくてはいけないと思っていました」と同センター企画ディレクターの平林英二さんは話す。そこへ東日本大震災が起きた。「防災減災の取り組みは何だったのか、と痛感した。これまでやってきたことを点検するという意味でもリストを見直すことになりました」
無意識に浸透を
センター関係者らで「ひとぼう新防災グッズリスト編集委員会」を立ち上げ、昨年10月、第1回委員会を開催。約20人が現状リストの課題を話し合った。その中で、「現金を十円玉で約50枚は必要ないのでは」「携帯電話の充電器が必要」といった意見や、「1次持ち出し品の量が多すぎて重い」などの問題点、「携帯電話のように『常に身につけておく』という発想も必要」といった指摘もあった。
11月に開かれた第2回委員会では「乾パンより、小さく滋養の高いチョコレートやあめ玉を」「救急袋に笛などを追加してはどうか」といった意見も。3月末までに計6回の委員会を開き、素案をまとめる予定だ。
平林さんは「防災グッズリストを作るだけでは本来の目標は達成されない」という。リストを使って個々の家庭で実際に備えができるかどうか。備えたとしてもメンテナンスも必要。またロープのように、リストにあっても使い方が分からなくては役に立たないものもある。平林さんは「防災を特別の非日常なイベントにしたくない。無意識のうちに防災のスキルが浸透するような社会を目指したい。その一環としてリストを見直したい」と話している。