被災地思い「あなたへ」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






主演・高倉健 残骸の中、歩く少年の姿を胸に。

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/120114/ent12011408250002-n1.htm



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「今のうちに映画をやっておかないと、という気持ちが強くなった」と話す高倉健 =東京都世田谷区


 日本を代表する俳優の高倉健(80)が今年8月、6年ぶりに映画のスクリーンに戻ってくる。東日本大震災を経て「自分の持ち時間」を意識した。「僕にできるのは、映画で何かを感じていただくことです」。映画に懸ける思いを語った。

 

 新作映画の撮影中、いつも持ち歩いていた台本に、1枚の写真を貼り付けている。震災の残骸の中、唇をかみしめて歩く少年。新聞から切り抜いた。「宝物です」。被災地を思う高倉は「人生は切ない。切ないからこそ、何かに『うわっ』と感じる瞬間がある」と語る。

 

 主演作「あなたへ」は昨年9月から11月にかけて、富山県から長崎県まで移動しながら撮影された。

 

 2006年公開の日中合作映画「単騎、千里を走る。」に出演した後、「俳優の仕事とは何なのかと、答えのないことを考えていた」。だが、震災を目の当たりにして、自らの残された時間を見つめた。「いつまでも生きているわけじゃない。あれは嫌、これは嫌と言っているわけにはいかない。やらないと火花は出ない」

 

 「あなたへ」は、妻の遺言に従って故郷の海へ散骨しようと旅に出る男の物語。男は、旅先で出会った人たちの思いをつなぐ役回りを担う。

 旅の目的地、長崎県平戸市。「久しぶりにきれいな海を見た」。大滝秀治(86)が演じた漁師のせりふを聞いたとき、思わず涙がこぼれた。

 

 その一言に映画のテーマが凝縮されていると感じた。命を奪う海の怖さやキリシタン弾圧。土地の悲しい歴史に思いをはせた。「ここは美しい場所じゃない、自分たちは苦しいところで生きているという物語です。せりふを言うべき人が言えば納得させられる。俳優とはそういう職業。誇っていい仕事だと思った」

 

 ハリウッドや中国などから毎年出演依頼があるが、経験したことのない道をあえて目指す。「今度は、一度もやったことのないフランスの監督とぜひ仕事をしたい」


 80歳とは思えぬほど若々しい理由は「体」と「感じる心」。

 歩数計を身につけ、就寝中もマウスピースをかんで老いを防ぐ。感じる心については、「企業秘密」と笑いながら、台本に貼った写真を見せた。毎朝、少年の姿を見ると「ギュッと気合が入る」という。


 「被災地には行きにくい。行ってはいないけど、ずっと思っています」と静かに語った。

                   


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「とてもいい旅」


 「とてもいい旅をさせていただきました。降旗(ふるはた)(康男)監督も珍しく興奮していたので、それを見てぐっときましたね」

 

 昨年11月半ば、関門海峡が見渡せる北九州市の門司港。高倉健が海沿いを歩く映画のラストシーンの撮影が終わり、「夜叉(やしゃ)」「鉄道員(ぽっぽや)」など19作品でコンビを組んだ盟友、降旗監督から「また会える機会があればうれしいです」と花束を贈られた高倉は、9月から2カ月半にわたった撮影をこう振り返った。

 

 映画「あなたへ」は8月25日、全国公開。高倉扮(ふん)する主人公は富山刑務所の指導技官。病死した妻(田中裕子)の「故郷の海に散骨してほしい」との遺言を守るため、退職後、一人で長崎・薄香港を目指し旅に出る。道中、さまざまな人々と出会い、やがて、生前の妻の思いを知ることになる。

                   


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【プロフィル】高倉健

 たかくら・けん 福岡県生まれ。昭和31年に映画デビュー。39年以降に主演した「日本侠客伝」「昭和残侠伝」「網走番外地」の各シリーズで不動の人気を確立した。代表作に「君よ憤怒の河を渉(わた)れ」「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」「南極物語」など。




草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員奮励努力セヨ。 

      高倉健が持ち歩いていた写真。平成23年3月14日に宮城県気仙沼市で撮影された、

      震災の残骸の中で水を運ぶ少年