【都道府県 伝統の教え】山口県
山口県周南市八代地区は特別天然記念物「ナベヅル」が本州で唯一越冬する地だ。かつてナベヅルは日本各地に飛来していたが、幕末の混乱期に各地で乱獲された。しかし、当時の八代村では、自発的に捕獲を禁止する活動が続けられ、それが今でもナベヅルが八代地区に集まる理由になっているという。
「今年はもっとたくさんのツルに来てほしいですね!」
地区には複式学級の八代小学校がある。全校児童24人の小さな小学校だが、地元の保護活動にはなくてはならない存在だ。
児童が手書きで作った「つる日記」には至るところにこうした地域の願いが記されている。10月下旬、ナベヅルの第1陣が飛来すると週に1回、監視所に出向いての観察と取材が続けられる。これは5、6年生の重要な仕事だ。
ナベヅルが飛来するとつる日記は“号外”を出して祝う。トップ記事は飛来の日をズバリ当てた人を「正解者」としてたたえる記事だ。その日からナベヅルの様子を克明に伝える活動が続く。
「オスとメスの見分け方」「ツル博士になろう」「ツルの豆知識」…。子供たちはナベヅルにまつわるさまざまな見聞を広げ、思いを育みながら、地元の人たちがツルを大切にしてきた長年にわたる営みを継承していく。