専門家を侮辱する素人対案。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





夕刻の備忘録 様のブログより。





数回に渡って「素人」と「対案」について書いてきた。
素人民主党が、政府ごっこの末に出す「対案」とやらには呆れるばかりである。そもそも「対案を出せ!」と詰られて、その結果出された「対案」など、その名に値しないことは小学生でも分かる道理である。それは典型的な弁解、典型的な詐術そのものである。

しかし、本質的問題はさらに奥深いところにある。素人の出す「対案」は対案にあらず。対案を出す人間の方が、出さない人間よりなお悪い場合が多いのである。

それは今も述べたように、弁解であり自己保身だからである。
そして、その裏で泣かされる人が大量に出て来るからである。

一番分かり易い例は原発問題であろう。
この問題の一番大切な部分は代替発電の方法である。

現状では、「何が何でも原発推進」などと言う人はほとんど居ないだろう。そこで問題になってくるのは、原発を無くした後、その不足した電力を如何にして補うかという問題である。ここに「対案」とやらが出て来るのである。

何でもかんでも反対、反対、と叫ぶ人のことは横に置いておく。問題は対案を提示する人、こうすれば原発は要らないという人の方にある。こちらがより深刻だと考える。

エネルギー政策について長く考えてきた人はいい。
科学者や技術者で、周辺の事情に詳しい人ならいい。

しかし、テレビのコメンテーターや評論家、そして自称総理や自称与党の「にわか対案」など、まさに笑止千万の戯れ言にしか過ぎない。原発を無くして、風力発電にしよう、太陽電池パネルを日本中の屋根に付けよう。そのための財団を作ろう。クリーンエネルギーの時代だ、再生可能エネルギーの時代だ、と騒いでいた人は今何処に消えたのか。

最も許せないことは、この種の人々が、新エネルギーの開発などを「やらせる」「やらせればいい」と表現していることである。

「誰にやらせるのか」「誰にやらせればいい」というのか。

これほど専門家を馬鹿にした言葉はない。科学者や技術者に、「やらせればいい」と一体誰が命じられるというのか。「科学技術立国」「技術の国「職人の国」と呼ばれる日本ではあるが、それは好きな人達が集まって、自分達の誇りに賭けて、寝食を忘れて取り組んだ結果であって、補助金目当てや地位目当てで出来るものではないのである。

金で面を張られて動かないのが職人である。
この種の発言が政治家から出て来る度に、暗澹たる気分になる。
専門家は政治家の奴隷ではないのだ。
日和見な大衆のオモチャではないのだ。
国家のため、国民のためと思い、そして真理のため、世界の平和のためと信じて、報いの少ない仕事に懸命に取り組んで人達が多いのだ。

その一つの証拠が以下の記事である。

新薬開発「日本は無力」…国の推進役、米大学へ
 日本発の画期的な医薬品作りを目指す内閣官房医療イノベーション推進室長の中村祐輔・東京大学医科学研究所教授(59)が、室長を辞任して来年4月から米シカゴ大学に移籍することが12日わかった。
 中村教授は今後、米国を拠点に、がん新薬などの実用化を目指すという。国の旗振り役が国内での研究開発に見切りをつけた格好で、波紋を呼びそうだ。
 同推進室は今年1月、仙谷由人官房長官(当時)の肝いりで、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一さん(52)らを室長代行に迎えて発足。省庁の壁を取り払い、国家戦略として医療産業の国際競争力を強化するための司令塔となることを目指した。
 ところが、発足直後に仙谷長官は退任し、10月の第3回医療イノベーション会議には、それまで出席していた経済産業省や内閣府の政務三役も欠席。今年度の補正予算や来年度の予算案策定でも、各省庁が個別に予算要求を出すだけで、「日本全体の青写真を描けなかった」(中村教授)という。
 中村教授は、ゲノム(全遺伝情報)研究の第一人者で、国際ヒトゲノム計画でも中心的な役割を果たした。中村教授は「国の制度や仕組みを変えようと頑張ったが、各省庁の調整機能さえ果たせず、無力を感じた。日本で研究した新薬を日本の人たちに最初に届けるのが夢だったのだが。せめて米国で新薬を実現したい」と話している。(2011年12月12日14時32分 読売新聞)

 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111212-OYT1T00551.htm?from=main4

医療推進室長が辞任へ=政府に見切り? 米に移籍
 <前半部分省略>藤村長官は会見で「中村教授は米国の大学で研究活動を続けたいという意向だ」と説明。「残念だ。(人材流出を防ぐため)給与の問題など、海外に負けないような方向で考えていくことは必要だ」と述べた。時事通信12月12日(月)19時5分配信

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111212-00000092-jij-pol

この期に及んで「給与の問題」云々などと平然と言い放つこの不潔さはどうだ。給料が倍になろうと十倍になろうと、やりたくないことはやらないのが誇り高き人達である。昔から「頭脳流出」などと騒がれたことは多いが、その理由の大半は研究環境の問題であって、給与や個人的な待遇の問題ではないのだ。官房長官のこの発言こそが、中村教授に対する最低最悪の侮辱であることを知れ!

長く原発に関わってきた科学者や技術者にしたところで、考え方は全く変わらないであろう。国家のエネルギーを支える、そのためには原発が好ましい、そのためにはより安全で、より確実な体制を作らねばならないと信じて、その生涯を賭けて取り組んできた人も多いのだ。末端に行けば行くほどそうなのだ。

分かったような顔をして「原子力村の云々」などと他人を揶揄しては、泡銭に縋り付いている自称評論家とやらが、何を偉そうに批判しているのか。風力をやればいい、もっと太陽光を利用すればいい、やらせればいい、やらせればいい。こんな連中こそ消えればいい。

我々は、如何なる理由があっても、国家・国民を分断する戦略に乗ってはならない。原子力に問題があれば、原子力の専門家が判断がつきやすいように、専門家が改善しやすいように環境作りをして、共に難問を解決すべきなのである。他人に向けて「何々をやらせればいい」などと嘯く人間は、平気で人を奴隷扱いする独裁者である。こんな連中の口車に乗って、不潔な発言を繰り返している人が周囲に居たら、是非とも注意して頂きたい。

「あなたは他人から命令されれば簡単に職を変えるのか」と。「あなたは金で面を張られ、これが欲しけりゃ俺の言うことを聞けと詰られて、ニコニコ顔で着いていくのか」と。「あなたはそんな人なのか」と、問い詰めて頂きたい。