【都道府県 伝統の教え】群馬県
上毛三山のひとつ「赤城山」を頂く群馬県渋川市。赤城山には関東で唯一確認できるという貴重な蝶(ちょう)、ヒメギフチョウの保護区があり、その美しい姿から「春の女神」「赤城姫」と呼ばれている。県の天然記念物に指定され、地元ではその保護が長年続いており市立南雲小学校も支えている。
氷河時代を生きたといわれるヒメギフチョウだが、戦後、山林は荒廃の一途。生態系が崩れ、県が「絶滅危惧種」に指定している。同校では「赤城山を広葉樹林の茂る豊かな山に」と、4年生が集めたドングリを、学校で苗に育てて6年生になったら植樹する取り組みを地道に続けている。ヒメギフチョウの産卵に欠かせないウスバサイシンや蜜を与えるカタクリやスミレを植える活動も行っている。上級生による新入生らへの指導や「ヒメギフチョウ博士になろう」「赤城山の成り立ち学習」…。さまざまな活動があり、それを地域がしっかりと支えている。
春が到来すると、全校児童は保護者らとともに赤城山に出かける。ヒメギフチョウに会いに行くためだ。「保護活動の手応えはどうか」「今年は姿を見せてくれるか」。興味津々の「全校観察会」を重ねるたびに、多くの子供たちが郷土への愛着、豊かな自然あふれる地域を守る思いを強めていくという。