【主張】女性宮家創設。
野田佳彦首相は女性宮家について「大変、緊急性の高い課題と認識している」と述べ、時期を区切らず検討を進めていく意向を示した。
近く皇室典範改正に関する有識者会議を発足させる際にはテーマを女性宮家の問題に限らず、旧皇族の皇籍復帰も含む幅広い論議を求めたい。
女性宮家の創設は平成17年、小泉純一郎内閣の有識者会議の最終報告でも示された。報告は「女性・女系天皇容認」「男女を問わず長子優先の皇位継承」と男系継承の歴史を否定した内容で、それらと併せた提案だった。
だが、この有識者会議はメンバー構成などから「初めに結論ありき」との疑いが指摘された。
発足前に女性・女系天皇を容認する極秘文書を作成していた事実も後に明らかになった。当時の議論は白紙に戻し、一から議論し直すべきだ。新たなメンバーには皇位継承の歴史に詳しい識者を入れるなど人選にも注意が必要だ。
旧皇族の皇籍復帰について、6年前の有識者会議の報告は「極めて困難」とし、その理由を「旧皇族は既に60年近く一般国民として過ごしている」「国民が皇族として受け入れることができるか懸念される」などと説明した。
旧皇族は戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の方針で皇籍離脱を余儀なくされた方々だが、皇室とはその後も菊栄親睦会などの定期的な会合を通じて、親睦を深めている。有識者会議の結論はあまりに一面的な見方だった。
旧11宮家の中には、跡継ぎに恵まれずに絶えた家もあるが、日本オリンピック委員会会長などを務め、男性が継いでいる家もある。男系継承を維持し、女性宮家創設を安易な女系容認につなげないためにも、旧皇族の皇籍復帰を含めた検討が不可欠である。
秋篠宮さまは先月、46歳の誕生日前の会見で、女性宮家などの問題について「私もしくは皇太子殿下の意見を聞いてもらうことがあってよい」と述べられた。ご希望を真剣に受け止めるべきだ。
5年前、三笠宮家の寛仁さまが月刊誌などで女系天皇容認に疑問を提起された際、羽毛田信吾宮内庁長官が「皇室の方々が発言を控えていただくのが妥当」と述べたのは、極めて問題だ。
今度こそ、政府に都合の悪い言論にも耳を傾け、皇室の歴史と伝統を踏まえた議論を望みたい。