お誕生日会見全文 2
(4)佳子さまは来年、高校3年生に進級されます。進路についてどんな話し合いをしていらっしゃいますか。
殿下 私も時々次女と進路については話すことはあります。ここで具体的なことはお話しできませんけれども、娘なりに恐らく真剣に今後の進路のことについて考えていると思います。
妃殿下 次女の佳子は今高校2年生でございます。中学に比べますと高校の授業は選択科目が増えまして、自分の関心や興味を深める機会が多くなっているように思います。これからの進路については、長女の眞子のときと同じように娘の考えや希望を聞きながら、少しずつ具体的に詰めていく過程を見守ってまいりたいと思います。
(5)悠仁さまは5歳になりましたが、日々どのような教育方針で接していらっしゃいますか。
殿下 去年おととしくらいでしたか、教育方針ということについて質問を頂きましたが、私は基本的にそのときと同じ考えで、これから幼稚園、今、年中組ですけれども、年長組それから小学校、中学校、高等学校と進んでいく中できちんと社会生活を送れるようになってもらいたいなと思っております。
また、そういう中で、ある時期になれば自分の立場もきちんと認識しなければいけませんけれども、それとともに自分が関心を持っていることを伸ばしていってくれたら良いと思います。ただ、やはり若いうちというか子どものうちというのは、できるだけ広くいろいろなものに触れておいた方が、裾野が広がると言いますか、よろしいと思いますので、そういう方向に、サジェスチョンのようなことができればよいかなと思います。
妃殿下 教育方針についてですが、確か一昨年、それ以前にもお話ししましたように基本的な生活習慣や身につけるべきことは年齢に合わせてございますので、大切に学べるように心がけたいと思いますし、先ほど宮様もお話しされましたけれども幅広い経験を重ねていくことも大事だと私も思いますので、生活の中でそのような機会を考えたり、環境をつくっていくことができたらと思います。
毎日、元気に幼稚園に通っており、集団生活の中でお友達と一緒に遊ぶことで喜びがあり、楽しみがあり、また、さまざまな経験をすると思いますし、幼稚園から戻ってきてから、あるいはお休みの日に、悠仁が関心を持っていることやしてみたいことができるような機会を作っていくことができたらと思います。
(6)悠仁さまのご成長ぶりや、眞子さま、佳子さま、また年齢の近い愛子さまとのふれあいについてエピソードをお聞かせください。
殿下 そうですね。成長ぶりですけれども、同じ屋根の下に住んでいますから毎日のように顔を合わせていると、連続的に変化していくものというのはなかなか見えないですね、私からは。ただ、確かに去年の誕生日と今年の誕生日では体も大きくなっていますし、それから、例えば、木にすたすたと登っていくのを見たりしますと、去年だったら余りできなかったのかなと思ったりすることもあります。また、一緒に本を見ながらあれこれと虫や恐竜のことなどなど、話す会話の量も増えて。そんなところが成長の様子なのかなと感じます。また、これも非常に不思議なことですが、先日、いわゆる着袴(ちゃっこ)の儀というのが行われましたけれども、何となく、袴(はかま)を着けると大きくなったように見えてくるのですね。(妃殿下を振り向かれて)私だけかね。
妃殿下 (殿下をご覧になって)私もそのように。(と、うなずかれる。)
殿下 そんなところが成長のその様子と言いましょうか。後は何でしたか。
記者 眞子さま、佳子さま、そして、一番悠仁さまに年齢が近い愛子さまとのふれあいのエピソードについて。
殿下 そうですね。その辺りはどうでしょうね。上の二人の娘とよく何か鬼ごっこをしたり、鬼ごっこって言うのかな。(妃殿下を振り向かれて)
妃殿下 (殿下をご覧になって)走り回ったり。
殿下 走り回って遊んでいることはあるけれども。(妃殿下をご覧になって)どうでしょう。私はあまりよく知らないので…。
妃殿下 (少し考えられる。)そうでございますね。今年は、敬宮さまと子どもたちが一緒になる機会というのは限られておりましたが、一緒に4人で過ごしているときはいつの間にか子どもたちだけで楽しそうに語り合ったり、また、敬宮さまが宮邸の方にいらした折には、いろいろなおもちゃがございますので、皆で楽しめそうな物で本当に声を弾ませながらおもちゃを積み上げたり…。後は、4人の中で悠仁が一番小さいものですから、3人のおねえちゃまの周りをうれしそうに走り回ったりすることもございまして、そのような、ほほえましい光景を目にすることが度々ございます。以前から御所に参内(さんだい)させていただきました折も(4人の)子どもたちでいろいろな楽しい話をしていることもございましたように、こちらの宮邸でも、20歳から5歳まで、15歳の年齢差はございますが、あまりそういうことも感じないような楽しい空間を作って。(殿下を振り向かれて)
殿下 (妃殿下をご覧になって)そうね。子どもたちが4人でいるととてもにぎやかな。ありますね。
妃殿下 そのようなこともありますからでしょうか、11月の上旬に敬宮さまが入院されましたとき、子どもたちも心配しておりましたが、そのお後にご回復されたことを伺い、とても安心しておりました。
質問前半の悠仁の成長ぶりについてお話をさせていただきます。
長男の悠仁は、9月に5歳になりました。幼稚園での生活も1年半がたちまして、随分慣れてきたように感じられます。恐らく、年少、そして今、年中として、いろいろと行事に参加したり、また遊びも広がったりする中で、昨年に比べると積極的に関わる姿が見られるようになったと聞いております。例えば運動会についてお話しいたしますと、昨年は初めての運動会ということもございまして、他の年少のお友達とともに、運動会っていうのは何だろうかと、むしろ戸惑って少し立ち止まって考えるようなこともございましたけれども、今年は随分いろいろな競技やお遊戯でしょうか、楽しそうに元気に参加している様子が見られまして、そういうところでも成長を感じました。
殿下 (妃殿下をご覧になって)何度も手を振ってくれたね。
妃殿下 (殿下をご覧になって)だいぶ心に余裕があったのでしょうか、うれしそうに満面の笑みで手を振っていました。また、宮様が玉入れをしているときも「頑張って」って他の子どもたちとともに応援をしたりもしていました。
殿下 (妃殿下をご覧になって)それは玉入れをしていたから私は分からないですけど。(一同笑い)
妃殿下 (殿下をご覧になって)勝ちましたときはとてもうれしそうにしていました。
その他に、運動に関連してということになりますが、私たちが5月に岩手県の山田町を訪れました。そこの小学校で体育の授業、体育館で全校生徒が体操を見せてくださいました。海の子体操でしたでしょうか。音楽に合わせて、とても活発な動きをいたします。
夏休みのことなのですけれども、その海の子体操のDVDを悠仁と一緒に見る機会がございまして、それを見ましたら、悠仁が海の子体操をしたくなりました。動きが小学生向きで、難しい動きもございましたが、悠仁なりに頑張って毎日というか、時間があると一日に一回するようなことをしておりました。一人ではなく、私は側にいることも多いので私と一緒にしたり、また父親とも一緒にしたり、元気な自分の姉たちとしたいということもあって、家族一緒になってしておりました。何か自分のしたいことをできるようになりたい、そういう気持ちを表現するようになってきたことも、大きくなったと思うときでした。
最近関心を持っていることを一つお話しいたしますと、紙工作という言葉でございますでしょうか。(殿下を振り向かれて)
殿下 (妃殿下をご覧になって)ペーパークラフト。
妃殿下 (うなずかれる。)ペーパークラフトに凝っております。図鑑を開いて、例えば魚とか恐竜とか、何か良さそうなものを選んでそれを紙に描いて、はさみで切って、そして色を塗っておりますけれども、恐竜などは非常に大きなものがございまして、そういうものは紙を貼り合わせて作りました。出来上がった喜びを家族にも伝えたくて、私たちが出かけているときは戻ってから「できたよ」って報告したり、大学や高校から戻ってくる眞子、佳子に早く見せたいということで、心待ちにしていることもございました。
(問3)眞子さまが成人を迎えられたのを機会に、あらためて殿下に皇統の継承についてお伺いします。現行の皇室典範の下では、眞子さま、佳子さまもご結婚後、皇籍から離れることになり、将来的には宮家の数が減って皇統の安定的な継承が難しくなるとともに、皇室のご活動の幅が狭まる恐れがあります。
殿下は一昨年の記者会見で「国費負担という点から見ますと、皇族の数が少ないというのは、私は決して悪いことではないというふうに思います」と述べられました。皇族の方々の東日本大震災の被災地でのご活動が続いてきた中で、現在のお考えをお聞かせください。殿下はこの1年間で、皇太子さまと皇室の将来のあり方についてどのようなお話を交わされたでしょうか。
殿下 恐らく皇室が今後どういうふうに存在するのか、その在り方と関係すると思います。私は以前に皇族の数が少ないことは国費負担という意味において悪くはない、ということを申しましたが、この考えは今でも変わっておりません。一方、現在の皇室というものをそのまま維持していくためには、やはり一つの集団というか、ある一定の数というのは当然必要になってくるわけです。国費負担の面、一方で、今ご質問にもありました、活動の幅、継承、そういうことを合わせて、それにふさわしい数というのは多分あると思いますけれども、それは私には分かりません。
いわゆる皇室の制度については、皇室典範があります。制度論については、これは国会の論議に委ねることになるわけで、私が何か言うということではありませんけれども、その過程において、今後の皇室の在り方を考えるときには、何らか、私もしくは皇太子殿下の意見を聞いてもらうことがあってよいと思っております。
皇太子殿下との皇室の将来の在り方について(のお話)ですけれども、今年は少し私が怠けていたところもあるかと思います。去年ほどそれについての話はしておりませんが、話し合いをしたことはあります。ただ、その内容については、ここでは控えたいと思います。
(問4)殿下にうかがいます。天皇陛下は2月、心臓の冠動脈に硬化や狭窄が見つかり、11月には気管支炎の症状で入院されました。皇后陛下は7月以降、頚椎(けいつい)症性神経根症や下腿筋膜炎による痛みや腫れの症状が出ていらっしゃいます。陛下のご公務のあり方について、殿下は昨年の記者会見でも、負担軽減は常に考えていかなければいけないというお考えを述べておられます。しかし、特にこの1年は、震災に伴う行事の変更や被災地へのお見舞い、節電など、両陛下にとって例年にない形でのご公務が多くなりました。両陛下のご健康やご公務のあり方について、どのような考えをお持ちでしょうか。
殿下 天皇陛下の公務、それから両陛下の公的なお務めとご健康のことというのは、非常に関係してくることだと私は思います。いわゆる公務といわれる国事行為は、数を減らすとかそういうことはできないわけですね、臨時代行とかでない限り。それ以外の公的なお務めについては、何年か前にそのようなことから、負担軽減が図られております。例えば、行事の内容を少し短くするとか、行事の間にちょっと休憩、ポーズを入れるとかですね。それから非常に大きかったのは、お言葉を無くす行事がだいぶ多くなりました。ご承知かと思いますけれども、陛下は一つ一つの行事におけるお言葉というのを非常に大切にしておられますので、それに使われている時間、労力というのは大変なものがあります。そのようなことから、ご自身も言われていますけれども、かなり軽減は図られてきたものと思います。
ただ、本年のことを言えば、東日本大震災が起こり、その後の各地へのお見舞いがあったり、大震災の被害などに伴う進講があったりなど、お務めの量が非常に多かった、ある意味特別に多かった年だといえます。この1月から11月までの間で見ましても、ここ数年の中では断トツに今年が多いというのは事実です。
やはり両陛下とも喜寿を過ぎておられます。そのようなことからも、今までにかなりの公的行事の見直しということはなされてはおりますし、年をとっても、ある程度の忙しさがあることが健康を維持する上では大事なこともありますけれども、宮内庁には、これからの行事の在り方を今の状態でずっといいのだという認識ではなくて、常に医師とも連携を取りながら柔軟に対応していくことが私は必要だと思っております。
(問5)殿下にうかがいます。今年もご公務やご研究で忙しい日々を過ごされてきましたが、この1年間を振り返っての感想をお聞かせください。両陛下、皇太子ご一家とのご交流も含め、心に残っている出来事はおありでしょうか。これからの1年間の抱負とともにお話しください。
殿下 この1年、私の公的な活動、それから研究などを通して言いますと、やはり、一番にあるのは東日本大震災であります。私たちも各地を訪れて、そこで被災された方たちにも会って、その当時の様子などを聞いたりもいたしました。その中で、先ほどともちょっと重複になりますが、肉親を亡くした人もいますし、家が流された、それから原子力発電所の事故があって避難を余儀なくされている、そのような人たちが、これは私がお会いした人たちですけれども、その多くがより前向きに日々を過ごしている様子が、私は非常に、この1年を通してみても印象に残っております。
そして、そのような中、8月の上旬に全国高等学校総合文化祭が福島県で開催されました。当初は開催をどうしようかということが随分いろいろ議論になったようでありますけれども、全国から高校生が集まって、これはひとえに実行委員会の熱意に、それから努力によるものだと私は考えますが、残念ながら幾つかできなかった種目(部門)はあるものの、かなりのものを行いました。
開会式で行われる構成劇も、今回の震災が起こる前までに用意していたものではなくて、震災が起こってから、日本、被災地の復興ということを考えた「ふくしまからのメッセージ」というタイトルだったと思いますが、そういう構成劇を新たに地元の高校生たちが作ったわけですね。私は、福島県の高校生がそのように非常に生き生きと今回活動し、さらに全国から高校生が大変な数、福島県に集まったという様子を見たときに、非常に大変な状況の中に、何か明るいものを見た感じがいたしました。
一方、ご質問にあった、研究、私の行っている研究についてですけれども、昨年までかなり長い期間、タイの研究者との共同研究を行っておりまして、それがまあ、(妃殿下を振り向かれて)昨年でいいのですよね。
妃殿下 (殿下をご覧になって)はい。
殿下 昨年の3月に、サイアム・ソサエティというところから本として出版されております。それで、最初のフェーズは一応一段落ついたという感じはします。ただ、やり残していることもまだたくさんあります。これは抱負のようなものになるのかもしれませんけれども、そこでやり残したことというのを、またもう少し続けてみたいなと。私の研究は、キーワードはドメスティケーション(家畜化)なのですね。タイの人たちと一緒に仕事をしながら自分自身で感じるのは、鶏のドメスティケーションを考えるときに、タイのみでなくて、もっと広くアジアを見る必要があるし、もうちょっと言えば、他のヨーロッパとかそういうところに、世界的に広がっているものを知るときに、やはり、そういうところを少し見ていかなければいけないなという気がしました。私の場合、時間を長く取って、海外の方に調査に行くということはなかなかできませんけれども、何年かに一度くらいはですね、現地へ足を運んで、自分で実感をしてみたいなと思います。
最近、現地に足を運ぶことが意外と少なくなってくると、大学で講義をしていても、最初の頃はかなり自分の体験に基づいて話をしていたのが、だんだん人の受け売りが多くなってきて、若干それについて、恥ずかしいこともあるものですから、そんなことも今少しこの1年をふり返って考えているところであります。
それから、両陛下ですね。両陛下との交流という点で言いますと、毎年例えば葉山であるとか那須であるとか御料牧場であるとかに、ご一緒する機会があります。葉山はちょっと短めなことが多いのですけれども、今年も2回ほどは葉山に、(妃殿下に確認されて)2月と6月の2回ですね。
妃殿下 (殿下をご覧になって)そうでしたね。(と、うなずかれる。)
殿下 ご一緒しましたけども、夏の期間にはうまく時間が合わなくて、ご一緒する機会はありませんでした。ただ、長男が夏の時期に、昆虫採集に興味があるというのか、虫を探すことに興味があったものですから、この赤坂御苑よりも恐らく種類数でいうと、皇居ははるかに多いと思うのですね。そういうことから、夏の一番虫の多い時期にはほぼ毎週に近かったですよね。(妃殿下を振り向かれて)
妃殿下 (殿下をご覧になって)はい。
殿下 皇居の方に行って、御所でごあいさつして、それで虫取りに吹上御苑に行くということがありました。そのようなときに、陛下も息子の虫好きを知っておられますので、普通だったら草刈りをしてしまうところをそのままに残して、虫がたくさんいられるような環境を作っておいたりとか。それから、暑い時期、当然短い期間ではありますが、ほとんど(毎週)家内と息子が二人で虫取りに出かけていくわけなのですけれども、それでも短時間、息子の悠仁に誘われるようにして、(陛下も)ご一緒に昆虫採集…(少しお考えになる。)
妃殿下 (殿下をご覧になって)虫探し?
殿下 (妃殿下を振り向かれて)虫探し?
妃殿下 (殿下をご覧になって)観察も…
殿下 観察、そういうことがよくありました。
皇太子同妃両殿下のところとの交流については、残念ながらそれほど多くはありません。ただ、先ほど家内がお話ししたように、秋口でしたか、みんなで集まったときに、子どもたちが集まって、非常に和やかというか、にぎやかというか、一時を過ごしていたということが私には印象に残っております。以上です。
(関連質問) 先ほど、陛下のご公務についてのやり取りがありましたけれども、先ほど殿下は陛下のご公務について、宮内庁は医師と連携を取りながらですね、さらに柔軟に考えていくべきだというようなことをおっしゃいました。宮内庁もですね、これまでいろいろ陛下のご公務の負担軽減に対しては、かなり苦心をされて、いろいろ工夫をしてきたと思うんですが、なかなか一挙に減らすというのは難しいという状況もあると思います。そういう中でですね、天皇陛下の公務に対して、定年制を設けたらどうかというような意見もありまして、例えばある程度の年齢になればご公務というのを減らして、国事行為に専念していただくという、そういう制度をもう考えていくべきではないかという意見もありまして、私もなるほどと思ったんですけども、殿下はこの制度から見直すという、そういうお考え方というのはどうでしょうか。
殿下 私は、今おっしゃった定年制というのは、やはり必要になってくると思います。というか、ある一定の年齢を過ぎれば、人間はだんだんいろんなことをすることが難しくなっていきますので、それは一つの考えだと思いますけれども、じゃ、どの年齢でそういうふうにするか。やはりある年齢以降になると、人によって老いていくスピードは変わるわけですね。だから、それをある年齢で区切るのか、どうするのか、そういうところも含めて議論しないといけないのではないかと思います。(了)
放鳥された鴨を笑顔で見送られる秋篠宮さま、紀子さま、眞子さま