平城京で最大規模の鉄鍛冶工房跡が出土。
朱雀門や宮に鉄製品供給か。
奈良市の平城京跡の朱雀門前で、奈良時代前半(8世紀前半)の鉄鍛冶(かじ)工房跡とみられる3つの建物跡が見つかり、奈良文化財研究所(奈文研)が17日、発表した。平城京エリアでは最大規模の工房群という。
平城宮の正門・朱雀門の周辺は当時の一等地で、奈文研は「平城京の造営期に朱雀門や宮内に鉄製品を供給していた可能性が高く、遷都直後の京の様子を知る貴重な資料」としている。
工房群跡は、朱雀門の南東約100メートルで見つかり、今年3月に出土した六角形の大型井戸跡に隣接。周辺から大量の炭を含む、焼け焦げた炉跡が約50基出土した。炉跡は地面を掘った直径30~40センチの円形で、鉄くぎや、鍛冶や金属加工に使う金床石(かなとこいし)や砥石(といし)、製錬などで生じる鉄滓(てっさい)と呼ばれる不純物も確認された。
さらに、工房は早期に埋め戻して整地され、更地は広場として利用された可能性が高いという。また、井戸からは「天平二年」(730年)と書かれた木簡や「右相撲(みぎのすまい)」と記された墨書土器も出土し、井戸は工房が役目を終えた後に掘られたことも判明した。
奈良大の酒井龍一教授(考古学)は「資材供給の合理性を考えればこれ以上適した場所はなく、工房自体が公共的なものだったと考えられる」と話している。
現地説明会は19日午後1時半から(小雨決行)。近鉄奈良駅からバス「二条大路南4丁目」下車北へ徒歩5分。問い合わせは、奈文研研究支援課((電)0742・30・6737)。
平城京跡の井戸から出土した「右相撲」と記された土器=17日、奈良市
奈良市の平城京跡で見つかった、鉄をたたく金床石(中央)と周辺の炉跡。後方は朱雀門=17日