【都道府県 伝統の教え】鹿児島県
鹿児島県には薩摩藩の武士の子弟を育てる独自の「郷中(ごじゅう)教育」が今も生きている。鹿児島市の清水小学校では「かしこく やさしく たくましく」という校訓とともに「郷中」の教え「まけるな うそをいうな よわいものをいじめるな」を「清水魂」として掲げている。
同校では大正6(1917)年、児童の心身鍛錬のために「錦江湾(きんこうわん)横断遠泳」を始めた。今も毎年7月下旬には、桜島から4・2キロの大海を児童が潮の流れに抗しながら隊列を組み泳ぎきる。
児童は5月から毎日2時間、プールでみっちり練習に励む。何度も検定を乗り越えなければ挑戦自体が許されない。逆境でも最後まで諦めないねばりと踏ん張り。大人でも大変な力量を要するが「横断遠泳」には小4から小6の児童100人が挑戦、ほぼ全員が毎年、制覇している。
大自然に挑戦する児童の横には、チャーターされた漁船が伴走しながら見守る。保護者、地域社会が学校を支えるために結束している点も、こうした取り組みが絶え間なく続く所以(ゆえん)だろう。
大海原でたった一人、自分の力だけで前に進む。死力を尽くして目標を制覇できた子供は大きな自信を得て表情も晴れやかに変わる。来年同校は開校100年を迎える。児童は節目となる記念の完泳に向け気持ちを新たにしている。