大王製紙元会長、さらに数億円か
「第3のルート」非連結会社も融資
大王製紙の井川意高(もとたか)前会長(47)が連結子会社から100億円超の資金を借り入れていた問題で、前会長が平成21年にも非連結の関連会社から無担保融資を受けていたことが29日、関係者への取材で分かった。融資額は数億円に上る可能性がある。この融資は同社の特別調査委員会の調査でも分かっていなかった。「第3の融資ルート」の判明によって借入金はさらに膨らむとみられる。東京地検特捜部も同様の事実を把握しているとみられ、巨額融資の全容解明を急いでいる。
前会長への無担保融資が判明したのは非連結の関連会社「エリエール総業」。関係者によると、融資は21年夏に行われた。前会長は連結子会社から借り入れを受ける際、東京都内の大手都市銀行の専用口座に集約していたがエリエール総業からの融資は別の都市銀行の口座に振り込まれていた。
特捜部が出入金記録を押収した今年6月時点では、この別口座に約7億円の残高があった。別口座について関係者は「役員報酬などの振込口座だったが、1度だけ関連会社から現金が振り込まれた」としている。
民間信用調査会社によると、20年9月時点で、エリエール総業は前会長の実弟の高博氏(45)が社長を務め、株式の大半を創業者一族である井川家が所有している。
大王製紙の調査委は前会長への無担保融資を発表した9月中旬から国内の連結子会社35社を中心に調査を進めていた。調査委の奥平哲彦委員長は28日の会見後、産経新聞の取材に「連結子会社以外の貸し付け実態についてはすべてを調べることはできなかった」とコメントした。
調査委の報告書によると、前会長は2つのルートで融資を受けていたことが分かっていた。子会社から非連結子会社のエリエール商工を迂回(うかい)させて22億5千万円を、さらに連結子会社から直接84億3千万円を借り受けていた。
借り入れ総額は106億8千万円に達する。うち47億5千万円が現金や株式などで返済されたが、59億3千万円が未返済という。
前会長側は、自らが所有する関連12社の株式と、父親で元社長の高雄氏(74)が所有する関連30社の株式の計約80億円相当を大王製紙側に預けており、これをもとに未返済分を支払う意向を示している。
大王製紙は近く会社法違反(特別背任)罪で前会長を刑事告訴する方針で、特捜部は前会長の立件を視野に子会社役員を事情聴取するなど捜査を進めている。