【風を読む】論説委員長・中静敬一郎
産経新聞が日米安保条約再改定案を先月22日付朝刊で発表したことに対し、多くの読者から励ましと注文のご意見をいただいた。
年配の男性は「当たり前すぎるほど当たり前のことが書いてあった。自分の国をきちんと守れない国が同盟なんてできない。基本中の基本のことを日本は60年間も放ってきたのだ」と訴えた。別の男性は周辺国の脅威をこう指摘した。
「再改定案には賛成だ。対テロ戦争に巻き込まれる危険はあるが、中国、ロシア、韓国、北朝鮮の動きから見て、他に選択肢はない」
一方で「安保には完全な平和国家日本という前提がなければならない。産経の提言にはそれが欠けている。戦争がやりやすくなるという再改定案は納得できない」との反対論も、中年の男性から寄せられた。
今月16日付本紙朝刊「新聞に喝!」では、元内閣情報調査室長の大森義夫氏が、再改定の理由について「中国の意図と日本側対応の不全要因を今一度検証することによって安保再改定の身近な必要性が読者に届くのではないか」と指摘した。いずれも本質を踏まえた貴重なアドバイスだ。感謝するとともに多くの問題点をさらに掘り下げていきたい。
大森氏はまた、サイバー攻撃などへの日米共同対応の必要性に言及したが、再改定案第4条「いずれか一方の締約国の安全又はアジア太平洋地域における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも協議する」を適用できることにも触れておきたい。
おさえておくべきは、日米同盟の信頼性を高めることが掛け値なしの急務であることだ。そうしなければ「非力」な国家の存続は危うい。
強靱(きょうじん)な国としての再生が再改定案の核心だ。それは、アジア太平洋で日本が米国を守るという相互防衛条項に表れている。このことは野田佳彦首相が持論の集団的自衛権の行使を表明すれば可能なのだ。自民党も民主党も、この課題に真っ向から向き合ってもらいたいのである。