台湾の国号論。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【日々是世界 国際情勢分析】

総統選で再燃する台湾の国号論




来年1月に総統選が迫る台湾で、「中華民国」という国号をめぐる論争が再燃した。事実上、二大政党による一騎打ちの構図となる中、歴史観だけでなく対中関係に直結する国号問題が改めて政治争点化し、両陣営の応酬に発展している。

 きっかけは、最大野党、民主進歩党(民進党)の総統選候補、蔡英文主席が8日の演説で「中華民国は台湾であり、台湾は中華民国だ」と発言したことだ。民進党は台湾独立、反中志向の支持者を基盤に発展してきており、台湾が正式な国号とする「中華民国」への反感は根強い。陳水扁政権時には「中華」や「中国」を冠する公営企業名などを「台湾」に変更する「正名運動」をしたこともある。蔡主席の発言は、従来の民進党の主張を大きく変更するもので、翌朝の1面トップで扱う台湾紙もあった。

 発言の狙いを、早稲田大の若林正丈教授(台湾現代史)は「中台関係で現状維持志向が強い中間層の有権者に軸足を移し、争点を内政問題に集中させるためではないか」と指摘。前回総統選の候補者が独立色の強い陳政権の印象を払拭できずに惨敗したこともあり、これ以上「中華民国」論を争点にしないことが真の狙いだったと分析する。

 だが、蔡主席の発言に独立派の有力者や識者らは「民主化運動の先人は中華民国を認めるために命を捨てたのか」などと反発。再選を目指す馬英九総統の中国国民党の報道官は9日、「立場を修正するなら、独立派の主張に反駁(はんばく)せよ」と蔡主席を挑発した。

また、国民党寄りとされる台湾紙、聯合報は12日の社説で「蔡英文の中華民国論は民進党(の主張)と整合性がなく、社会を分裂させ、両岸関係を困難にする。民衆をだまして権力を奪う手法だ」と指摘した。中国の国務院台湾事務弁公室は楊毅報道官が同日の記者会見で、「殻をかぶった台湾独立の主張だ」と批判。議論は台湾だけでなく、中国側にも波及した。

 一方、蔡主席は9日、民主化や総統直接選を経ることで「中華民国は台湾の土地、住民と一体化し、台湾の政府となった」と真意を説明。10日には、馬総統が双十節式典で「大陸当局は中華民国が現在進行形で存在する事実を正視すべきだ」と中国側に呼びかけたのに対し、蔡氏が「馬総統こそ中華民国が台湾であることを正視してほしい」と批判した。民進党寄りとされる自由時報は12日の社説で、馬総統が双十節で「中華民国はわれわれの国家であり、台湾は家園(故郷)だ」としたことを、「法律上も事実上も台湾住民をだましており、最終的な目的は台湾を中国に併呑(へいどん)させることだ」と酷評し、間接的に蔡主席を援護した。

 両陣営の過熱する論争に、国民党寄りの中国時報は13日の社説で、「選挙には競争が必要だが、国家には団結が必要だ。意図的に『中華民国』と『台湾』の差異を作り出さないでほしい」と冷静な対応を求めた。