福島の英雄たち。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【主張】日本国民全てが受賞者だ




東日本大震災で東京電力福島第1原発事故の対応にあたった自衛隊、消防、警察から5人が代表に選ばれ、欧州で栄誉ある賞の一つとされるスペインのアストゥリアス皇太子賞を受賞した。

 同国北部オビエドで行われた授賞式で主催者のフェリペ皇太子が5人を「福島の英雄たち」と呼んだことに大きな意味がある。

 皇太子はあいさつで、当時現場にいた関係者の「勇気」や「自己犠牲の精神」に感動したと語った。授賞理由でも「日本社会に深く根付いた価値観を体現した」と称賛している。復興に向け苦闘する日本への連帯と激励のメッセージと受け止めたい。

 「人類への貢献」をたたえるアストゥリアス皇太子賞は30年余の歴史があり、毎年選ばれる学術・技術研究や国際協力など8部門の歴代受賞者には世界の著名人や組織が少なくない。日本からはこれまで宇宙飛行士の向井千秋さんらが選ばれている。

 授賞式に出席した5人の内訳は▽陸上自衛隊中央即応集団の2人▽東京消防庁ハイパーレスキュー隊1人▽警視庁と福島県警各1人である。いずれも原発冷却のための放水や住民の避難誘導にあたった現場指揮官だ。

 大震災により、福島第1原発では1~3号機の3基が全電源を喪失し、水素爆発も起きた。放射線の拡散を食い止めるには原子炉を冷やす水が必要だが、冷却システムが停止しており、至近距離から放水するしかなかった。

自衛隊ヘリや放水車などが総動員されたのはこのためだ。いずれも、放射線被爆(ひばく)の危険にさらされながらの厳しい任務だった。

 しかし、この未曽有の災害に立ち向かったのは原発現場だけではない。震災対応には自衛隊だけで10万人が動員され、警察官など殉職した公務員も少なくない。

 第1原発は9月末、1~3号機の原子炉圧力容器すべての温度が100度以下の「冷温停止」状態にこぎつけた。式には招かれなかったが、授賞説明文書では現場作業員を含む東電職員らが過重な交代勤務や食料不足などに耐えて奮闘したことを称賛している。

 授賞式で冨岡豊彦消防司令が「(英雄たちの)称号は日本の全国民に贈られたものだ」とスピーチした。原発事故で高く評価された日本精神を、より安全な原発づくりへのバネとしたい。